Key Hol(p)e Shirt -2
スマートな着こなしが似合うシャツのバランスを突き崩し、
カオスな表情を加えるのは、シャープでクリーンな世界観と
逆方向の世界からやってきた手の仕事。
スタンプを押しただけのチープなネームラベル、
ミシンの何倍も手間なハンドステッチのチクチク仕事。
ラベルの赤いステッチはサイズの表示で、
|はサイズ1(S相当)、+はサイズ2(M相当)を表します。
名前の由来の鍵穴(Key Hole)です。実際はボタンホールです。
ミシンで作れば10分の1以下の時間で、簡単に綺麗に出来上がりますが、
味も面白さも無い。
オーダー仕立ての高級テーラーならいざ知らず、
シャツに、今どき、手縫いで、ボタンホール作れっていう、工場泣かせの無理難題。
「ちょっとガタついたり縫い目が荒れるのも、きっと個性的な味」と
お願いし倒しまして出来上がったKey Hole。
セットになるのは、内側に付いて中途半端な大きさで、
鍵やリボンをしまうぐらいにしか、役に立たないポケット。
「お気楽な感じで、スイスイっと手でまつってください」っていうオーダーのおかげで、
形もステッチもいびつで不揃い。ミシンの何倍も時間がかかるし。
ベルベットリボンに止めた鍵は、フランスで集めた鉄や錫のアンティーク。
小ぶりのものを選んでも、形や太さ、大きさは様々です。
胸のKey Holeから垂らしてぷらぷらとさせたり、リボンだけを外に垂らしたり、
チャームに使ったり、机の引き出しの中に放り込んで忘れ去ったり。
防錆処置済の鍵も、洗濯や暑い季節の汗にはご注意ください。
もし錆びて汚れが付いて(錆って落ちないんです)しまったら・・
「ま、これも味さ・・」と自分に言い聞かせて、
平気なふりにつとめてください。
水牛の角を削り出したそのままを染色せずに仕上げたこのボタンは、
ナチュラルな風合いと、アイボリー色の深みと質感のある柔らかな光沢と、
しっかりとした厚みという、貝には無い魅力が詰まります。
テーラードジャケットやコート等、アウターに使う事が主の中で、
小振りなサイズは珍しく、貴重です。
シャツボタンでポピュラーな樹脂(プラスティックやポリエステル)や貝。
樹脂に比べて貝のボタンは値が高く、白蝶貝は高級品。
それに並ぶ価値を持つバッファローも貴重品。
ミシンだけで完了し細かく綺麗に縫うことを競う仕事に加わった、たくさんの手の仕事。
ボタンの縫い付けもミシンで器具にセットすれば、自動であっというまに出来上がり。
でも縫い糸はミシンにかけられるものしか選べず、バッファローのボタンには不釣り合い。
質感にふさわしい麻のしっかりした糸で根巻きして足もつけて。
面倒は細部に宿ります。