1900-1910 Antique ALTERATION Pure Indigo French Linen Maquignon Blouse Biaude Coat
20世紀初頭にフランスで作られたBiaudeと呼ばれる仕事着です。
Biaudeは19世紀から20世紀中期ぐらいまでに着られていた、Maquignonという名で呼ばれる牧畜業に携わった人々が主に着ていたもので、馬や牛の放牧や仲買い人、羊飼いなども着たと言われています。
テーラーリングをベースとした立体的なパターンメイクや、機能性とファッションとしての装飾性を見事に融合、昇華させたフランスのワークウェアの世界。
撚り杢のソルト&ペッパー生地のアトリエコートやフレンチサージや、モールスキンのカバーオールやワークパンツ、太畝ピケのハンティングジャケットなど、独自のスタイルを見せながらも、現代に通用するモダンさを持ったスタイリッシュなワークウエアが勢ぞろいする中で、全く違った魅力を持つのがこのBiaudeです。
仕事や作業をするときの上っ張りとして、古くからの民族衣装が転用されて発達したのだと思われるこのワークウェアは、都市部や工場などで産業の発達とともにスタイルが出来上がっていった、一般的にイメージされる“フレンチワーク”と呼ばれるワークウェアよりも深いルーツに根ざしていて、ひときわ異彩を放つフォルムに深い趣きがあります。
年代が若くなるにつれて前に開きのあるコートタイプのものが増えましたが、原型はも汚れや家畜の毛がつかないようにする為の上っ張りとして、着ている服の上に頭からかぶって着込んで覆うオーバースモックのような形が主だったようです。
この1着もプルオーバーのノーカラースモックのタイプの物でしたが、現代的な着やすさを考えて、前開きを作り、衿を付け、ライニングを施すことで得られる清潔感と、内側と外側のテクスチャーのコントラストを楽しみ羽織れるアウターとしてALTERATIONを行いました。
一番特徴的なのは、服の上からかぶり込んでも窮屈になったり、動きを妨げたりせず仕事や作業をこなすための運動性を保つためにとられた分量たっぷりのギャザーです。
通常の服の身幅の倍以上の分量を、衿の付け根のネックラインの前後や横部分など全体に寄せたギャザーが作り出す膨らみと丸みとボリューム感はこの服の最大の魅力であり、特徴であり、他には類を見ないユニークな形を持った1着です。
この特別な作りが生み出すフォルムは愛らしさは、ともすれば女性的と捉えられがちですが、実際にはMaquignonと呼ばれる仕事に従事していたのはほぼ男性であり、Biaudeもフランスの男の仕事着を代表する存在の1つです。
同じ頃にアメリカで牧畜に携わっていた人々の仕事着である所謂カウボーイやウエスタンのスタイルと比べれば、その存在感と独自なスタイルには、フランスという国の国柄が感じられます。
Biaudeやフランスの古い時代のスモックは、農家の奥さんなどがちゃんとした機能的なパターンメイキングの知識や理論のない頃から考え出された型にのっとって、家に代々伝わってきた方法で手作りし、古い型で作られたと考えられます。
Biaudeの原型は、アトリエコートやモールスキンなどの、所謂フレンチワークウェアがもつ立体的で曲線的な体に沿うパターンとは対極的な直線で切り取られたの四角形のパーツの組み合わせで作られています。大分量のギャザーがとられたボリューミーで丸みがる柔らかな印象のBiaudeの原型が四角形の組み合わせというのも面白いものです。
四角形のパーツを組み合わせたのは、服飾パターンが未発達だった頃から作られていた物だからという事と、「生地を無駄にしたくない」という両面の考え方による物ではないかと思います。曲線的なパーツだとどうしてもパーツを切り出す時にパーツとパーツの間に隙間ができてしまってその分が無駄になってしまします。
とは言っても、その直線的な原型では不足するの運動量をカバーして動きやすくするため(と装飾性を加えるため)に施したギャザーの分量が、生地の用尺を大量に必要とし、このBiaudeも今の通常のパターン手法で作られれば、この半分ぐらいの生地量で大丈夫なのではないかと思えるところにも、矛盾を孕む面白さがあります。
袖の付け根の肩部分には、ボックスプリーツを作って腕の動きや袖が窮屈にならないような工夫がされています。
腕の付け根の脇の部分には、腕を上げた時に脇全体が引っかかって突っ張ったり、作業の妨げにならない用にするために四角形のマチが作られています。
機能性を優先させるのが普通であり、製作上から考えても縫製の手間や無駄を省き、生産効率を高める事が当たり前の仕事着に、このようなデザイン性を求め加える事にも、フランスというモード発祥の地が培った“ ファッションの原点 ” が感じられます。
このようなデザインは機能だけを求めるのであれば必要ないはずで、仕事でもファッションを楽しむ、かつてのフランス人の遊び心の表れなのでしょうか。
このBiaudeの生地としてポピュラーなVilletteと呼ばれる生地は、世界のリネン原料の亜麻生産の70%以上を生み出し続けるリネン大国フランスならではの仕事着に使うのがもったいないほどの贅沢なリネン生地です。
細番手のリネン糸で、高密度に織り上げた目の詰まった生地は、機械技術がまだまだ未発達でほとんど職人の手仕事で麻を処理し、糸を紡ぎ、織り上げた時代のものとは思えないほど細くしなやかな糸で稠密に織り上げられていて、動物の毛がつきにくく払いやすいように考え出されたものです。
汚れを目立たせないためにも濃いインディゴブルーに染め上げられた生地は、Villetteと呼ばれる、Biaude独特のものです。
このBiaudeが作られた1900年初頭には、ヨーロッパ独自の藍染め方法であるウォードによる藍染はすでに、15世紀から始まったインドから輸入されるインド藍による藍染め方に駆逐されてしまっていましたが、その後に起こった藍染めの技術の革新である、合成インディゴの普及は1897年以降でした。
この1着は、天然のインド藍による藍染めリネンが作られていた時代の貴重な1着です。
しっかりとした手触りと張りがありながら、柔らかさと軽さを併せ持つ
麻の良い部分だけを集約したかのような昔の生地特有の素朴な趣きを残す風合いを持っています。
オリジナルの袖先のカフスは、作業時に邪魔にならないようにギャザーを寄せて絞ったタイトな袖口を止めるためだけのものでした。
アウターとしての機能を加えるに当たってカフスの分量をを少し広げ、ターンアップするダブルカフスにデザインしたものに作り替えました。
ラウンド型でステッチの無いカフスは、仕事着のものとはまた違ったソフトな印象があると思います。
表地もライニングも裾はリネンのハンドステッチ。
ライニングの他の箇所もすべて手によるブラインドステッチです。ミシンでは作り得ない自然な縫いしわが時間の痕跡を映します。
ボタンホールはすべてハンドです。リネンコードであえてラフにかがり、味のあるものです。
袖の長さを継いだ部分や、袖先のハンドステッチとダーニング、刺子による補修が趣を深めます。
内ポケットはハンドの内縫いで止めた縁の浮いた立体的でふくよかな表情です。
新たに作った前開きの前立てには、両サイドにボタンホールを設けました。
時間の痕跡が刻まれたフレンチヴィンテージのガラスボタンと
古布のくるみボタンを繋げたボタンは、どちらのホールにもボタンをつけられます。
右前でも左前でもひっくり返してもボタンが留められる仕様です。
付け替えが面倒なら、拝みに止めればそのままでボタンのつけ替えも不要です。
時には裏側を表に出して着てみたりしても面白いかもしれませんね。
男性にも女性にもお薦めしたい1着です。
働くひとたちのものだった事と示す、擦り切れ、破れを丹念に手でかがり、
裏地をあてて糸を刺し、穴に糸を組んだ補修の数々。
意図して作る事の出来ない経てきた時間を楽しんでいただきたいと思います。
働く人達のために生まれ、機能性の求めに応じて考えられた物であるはずなのに、
現代にも通じる洗練された趣あふれる佇まいを持つ、
フランスの古いけれども古びれない1着です。
サイズ 2(ワンサイズフィットオール)
肩幅 =52cm
バスト=65cm(脇下)
袖丈 =57 cm
着丈 =76cm
フランス/日本製
フロントファブリック フレンチリネン(Villette) リネン100%
バックファブリック ラスティックコットンブロード コットン100%
ボタン ヴィンテージ フレンチガラスボタン&古布くるみボタン
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1900-1910 Antique ALTERATION Pure Indigo French Linen Maquignon Blouse Biaude Coat
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD