新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

1940-1950 French Linen Reversible Worker Atelier Coat

1940-1950  French Linen Reversible   Worker Atelier Coat

1940-1950 Vintage ALTERATION French Linen Reversible Chore Work Worker Atelier Coat 

 

 

 

今なお世界のリネン原料のフラックス(亜麻)生産の70%を生み出し続けるフランスは、文字通りのリネン大国です。温帯から熱帯の気候を必要とするため、綿の栽培が難しいフランスの気候での栽培に適したリネンは衣類のみならずシーツなどの寝具や寝間着などのホームリネンから、テーブルクロスやナプキンなどのテーブルリネンにも使われフランス人にとっては綿以上に生活に密着した最も身近な繊維です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年では中国の紡績技術の発展により、リネンを糸にする紡績工程は国外の場合が多くなりましたが、このコートが作られた1940年代はフランス国内で栽培、紡績、製織された真正のフレンチリネンと呼べる生地が作られていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス人にとって身近な素材のリネンですが、Biaudeと呼ばれる馬商や羊飼いが着ていたリネンのインディゴ染めのオーバースモック以外には、主素材がリネンという仕事着は無く、リネンのソルト&ペッパーシャンブレーが使われたこのワークコートは当時としても希少な物でした。デッドストックで見つかることも希少です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワークコートは働く人たちにとっての上っ張りとして、 汚れの防止や機能性の求めに応じて作られました。 その証拠に米国や英国のものは、頑丈な素材を使い2重3重のステッチが入った直線的なディティールで、縫製効率や生地要尺の節減、意匠よりも機能優先の基本にしたがった頑丈で無骨な物が殆どです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしフランスで作られた物は、機能性を重視しながらも、そこかしこに繊細な数々のディティールを散りばめ、機能的装飾デザインの素晴らしさから アーティストにも愛用される「Atelier Coat」という 名称を得た別格のものを確立させています。

 

 

 

 

 

 

このコートも大きなポケットで、機能を果たしながらも、曲線を多用した装飾的なデザインや、立体的な造形など単なる労働着を超えた意匠に満ちています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直線に比べて縫製に時間と技術が必要な上に、生地の用尺も増えて非効率な角をとったりカーブを描いたりしたポケット。角を折り込んでいたり、曲線を描くポケットのフォルムは、パーツを準備する際に型に合わせて曲げながら折り込んでプレスする作業や、曲線に合わせながら縫い付ける作業など、直線で構成される形(例えば四角形)とは比較にならない手間のかかるものです。生地からパーツを切り取る際にも、曲線的な形は直線に比べて隙間が大きく、生地の無駄を多く生みます。

 

 

 

 

 

 

そういった効率だけで無く「着心地」と「デザインの洗練」を忘れ無いのがモード発祥の地、フランスのエスプリ精神の形なのだと思います。もともと手の込んだ仕様の手間と時間をかけられたポケットを一度解体し、裏に生地を縫い合わせ、それをもう一度手で内縫いすることでステッチを隠し縁を浮かせて立体的に。ぷっくりとしたフォルムと、縁から覗く裏地の生成りが軽さと動きを与えます。

 

 

 

 

 

 

ハンドステッチで止めたライナーは、着込むことで切り放しのヘムがほつれ、着る人との新たな年輪を刻み、軽さと動きのある表情です。

 

 

 

 

 

 

縁を浮かせて手で内縫いした丸みのある立体的なライナーサイドのポケット。そのままモザイクにはめ込んでポケット周りに一体化させたラベル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汚れが目立たない」という理由だけで採用されたのだとは信じられないほど完成されたソルト&ペッパ深いチャコールグレーの2本の糸を撚り合せたメランジの縦糸(撚り杢)とオフホワイトの緯糸で織り上げた、しっかりしたシャンブレー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然な光沢と洗いざらしのふくよかな皺が渾然となった深い風合いはリネンならではのもの。着込んでいくことで進化して、経た時間を映す水墨画のような陰影を描く姿となる日が楽しみな一緒に育つ創造性を秘めています。

 

 

 

 

 

 

蚤の市で見つけた古布から着想を得たモザイク状のきりはぎを施したライナーサイドの背中。 使っていくうちにできたのであろう、破れや汚れを切り除いて継いだその布には、切り替えとハンドステッチで作り出された先人の卓抜したモダンなアイディアと、ラスティックなテクスチャーが融合したアーティスティックなセンスが溢れていました。部分部分に少しだけ古布を組み合わせた色のトーンや生地感の違いが土臭さとは無縁のモダンさと手の仕事の結びつきを描き出しています。

 

 

 

 

 

 

絞られたアームホールから腕の稼働の必要性に合わせて幅を広げつつ曲線を描きだす美しい袖の作り。テーラーワークを基本としたパターンメイクと縫製が、「 ファッション 」 と対極の位置にあるはずの「仕事着」を、様々なメゾンやデザイナーがモデルとする高みに今も位置付けます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手の温もりではなくストイックさを伝える不揃いなステッチ、縫い皺の表情や生地のコントラストが乾いた奥行きを作りだします。

 

 

 

 

 

 

ビスポークの仕事かと見紛うほど、体のラインに沿う肩傾斜。  

立てたバランスも小ぶりで、着こなしの幅も広がるショートポイントのテーラーカラーはアルチザンを思わせるミニマルな佇まいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルトを巻いたり(なかなかサマになるまでの道のりは遠いけど・・)垂らしたり(ブラブラさせてるのも、結構邪魔だったり・・)箪笥の隅に忘れ去ったり(結局これかも)。

 

 

 

 

 

 

ボタンはフランスのデッドストックのガラスのボタンです。 グレーのベースに入れられた金のモチーフがワークコートに別の彩りを与えます。ライナーサイドを表に着る場合は拝みに止めれば そのまま止めることができます。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライナーサイドの裾とスリットのヘムも、軽さを作り出す切り放し。ほつれた糸が動きを感じさせ、周りに入れたハンドステッチが柔らかな皺を生みます。

 

 

 

 

 

 

ゆるやかなトラペーズラインを描き、テーラーリングに基づくパターンで作られ、ワークという範疇には収まりきらない要素に満ち溢れた一着です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファッションとは無縁のはずの世界である仕事着に込められた、フランスのエスプリとセンスが、多くの愛好家を生み、惹きつけ続け、お手本となり続ける、フランスというモード発祥の地が培った“ ファッションの原点 ” が生み出したワークウェアの到達点の一つです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉庫に眠る古の生地を掘り起こし、100年前の機織り機を修理する。過去に遡り、時間を経なければ、簡単には手にすることの叶わ無いものを、再現しようと新たに作り出され続けるもの。

 

 

 

 

 

 

でもそれは、長い時間を経てきたものへの憧憬を形にしようとした、表層的な作り物にしか、なり得ないのかもしれません。しかしここにあるのは、本当に長い時間を経過した痕跡を凝集した結果と、現代性を融合させたものが形になった一着です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「希少で貴重で古いもの」という点だけが魅力という事で終わらせるのでは無く、このコートの持つ輝きを、現代的な着装や感覚と融合させ「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた世界に1点だけの存在を楽しんでいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

サイズ 2(46-48相当 )

肩幅 =44cm 

バスト=55cm(脇下) 

袖丈 =60 cm 

着丈 =110cm

フランス/日本製

フロントファブリック  ピュアフレンチリネンシャンブレー   麻100%   

バックファブリック   ラスティックコットン   コットン100% 

ボタン       デッドストック フレンチガラスボタン&古布くるみボタン

 

 

 

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1940-1950 Vintage ALTERATION French Linen Reversible Chore Work Worker Atelier Coat 

[ALTERATION By Manure Of Drawers] SOLD