1930-1940 Vintage ALTERATION Indigo Dyed French Linen Chore Work Worker Jacket
80年近い時間と日差しを蓄えこんで、色褪せたリネンのワークジャケット。
退色の色むらが激しかったオリジナルの状態を一旦解体し、裏表を逆にして組み立て直した1着です。
随所に残る日灼けの濃淡模様と、着込まれたダメージがこのジャケットの辿ってきた時間を色濃く映し出しています。
綿を栽培するには気候が寒冷すぎて、インド航路が確立されるまでは、地中海経由のアラブ圏からの輸入によるものしか綿が手に入らなかったフランスにとって、身近な衣料素材は寒冷な気候での栽培に適した麻や食料としての役割も兼ねる羊の羊毛と羊皮、同じく食料の副産物の牛皮などでした。
解体する時に獣毛がポケットの底や見返しの隅に付いていた事から、都市部の労働者の物というよりは、周辺部（＝田舎）の農夫や下働きに就いていた人達が着ていた物なのだろう思います。
第一次大戦後の長引く不況にまだまだ喘いでいた1930年代のフランス。
インディゴ染はファッションからの要求とは無縁の、汚れ隠し、虫除けといった実質的な必要や、特別な設備がなくても家の桶を使って常温で染められる、小規模な染色にも適した便利な手法でした。
もともとそれ程深く発色させず浅めで綺麗なインディゴブルーに染められた生地も田舎町で、綿などよりは一番身近にある麻を使って、地域の人々のリネンのベッドシーツを受注して手織りで作る小規模な機屋さんが織り上げたものかもしれません。
適度な張りのある柔らかな生地は、家畜商のMaquignonが着ていたBiaudeに使われた麻生地(Villette)のような細い糸で緊密に織られた物とは違って、皺のふくよかさと軽さがリラックスした表情を漂わせてくれます。
ボタンホールは解体時に一旦全て糸を解き、ラフな風合いのフレンチリネン糸でかがり直したものです。
ヴィンテージのガラスボタンは、有名なチェコやベネツィアの物のように凝ったデザインやカラフルな色使いの装飾的な高価な物だけではなく、庶民や労働者にむけて実質的でシンプルな形で安価なものがたくさん作られて浸透していたフランス特有のもの。
白濁したミルク色のヴィンテージガラスのボタンは、プラスティックがまだなかったこの頃でも大量生産が可能で、骨や角、貝や金属よりもずっと安価な当時の世相と面影を色濃く映すフランスならではのものでした。
防水、高発汗、強靭、難燃。素材はどんどん高機能になり、形も運動性や作業効率を追求したものへと進化を続けてきたけれど、ファッション的には退化しているに違いないワークウェアの世界。
昔のフランスのワークウェアは、「 ファッション 」 と対極の位置にあるはずの「労働着」が、
様々なメゾンやデザイナーのお手本となり続ける、単なる労働着を超えた存在です。
この服が働く人達のものであった事と、長い時間と愛着、愛用を示す全全体各所の擦り切れ、破れ、穴あきは、刺し子、ダーニング、パッチなど様々な方法で飾られた、このジャケットの履歴証明です。
一度取り外し、裏をつけて2重にしたうえで、内側を手で掬い縫いして身頃に縫い付ける事で、丸みとふくよかな質感のあるフォルムにしたポケット。
ステッチを表に出さない仕様で、手仕事の温っぽさを打ち消したミニマルな顔立ちが古いけれども新しい。
ライナーの手縫ならではの縫い皺が、ふくよかな表情を作ります。
生地の縮率差を利用した表地のたるみ皺や歪みを作り出した袖やフォルムも、
この服が只のVINTAGEをやめた事のしるしです。
経てきた時間を映す陰影と、ふくよかな皺を纏う1着。
新たに作られた服には手に入れられない、VINTAGEの魅力と風合いが今と結びついた1着です。
セピア色の写真の世界を懐かしむ服とは一線を画しています。
サイズ 2（46相当 ）
肩幅 ＝42cm
バスト＝53cm(脇下)
袖丈 ＝58 cm
着丈 ＝63cm
フランス／日本製
表地 インディゴリネン リネン100%
ライナー ラスティックコットン コットン100%
ボタン フレンチヴィンテージガラスボラン（ランダムチョイス）
アンティークファブリックの包みボタン
1930-1940 Vintage ALTERATION Indigo Dyed French Linen Chore Work Worker Jacket
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD
