Mid80’ s Vintage ALTERATION Old Label MACKINTOSH Rubberized Cotton Rain Mac
陽に灼け擦り切れ色褪せた古いマッキントッシュ。高密度に織り上げられたコットンポプリンで薄めのラバーを挟み込んだライトウェイトのマッキントッシュクロス製。防水と防風のための実用着から街着への変化を模索していた頃の1枚です。
今から200年も前の1823年に スコットランドの科学者だったCharles Macintoshが発明した防水生地と製法を、今まで受け継いできたマッキントッシュの歴史は、カシミアやツイードのようにスコットランドの伝統産業と呼んで良いものです。マッキントッシュと同じように英国を代表するBarbourの創業は1894年。イングランド北東部のサウスシールズで、北海の悪天候の下で働く漁師など労働者のための実用着として作った「ビーコン」が始まりです。Barbourはその一番のベースであるワックスコットン(オイルスキン)生地を開発した訳ではなく、生地会社が帆船の帆の材料として作り出した生地を、帆船から機関船への移行でと言う近代化の趨勢で帆のニーズが先細りになり、帆布以外にガーメント製造への進出を画策していた、セイルメーカーのWebster’s社から生地の提供を受けたものです。
Charles Macintoshがマンチェスターで設立したCharles Macintosh India Rubber Companyは、当初の製品の生地のゴムのきつい匂いや、剥離、溶解などの問題から顧客からのクレームが相次ぎ、不安定な経営状態が続きました。技術を改良し安定させ共同経営者になったThomas Hancockは、独創的な発明で英国のゴム工業全般を確立させた、イギリスのゴム工業の父と呼ばれた発明家でした。
この頃のマッキントッシュは、自らのブランドや社名を冠したガーメント自体の製造よりも生地の供給が主体で、ガーメントの製造は布地を買い付けた数多くの小さな企業や街の仕立て屋が行ったものがほとんどでした。したがって、それぞれが自分達の店名やブランドで販売していた為、「Mackintosh」という会社名がコートのブランドやメーカー名として顧客に認知される事もあまりありませんでした。代わりに浸透したのは、様々な業者が生地の名前を略して呼んだ「MAC」という呼称が、英国でレインコート的な衣料全般を示す言葉となって定着していきました。
Charles Macintosh の発明した生地自体の特許は1837年に失効し、その技術を受け継いだ様々な会社が生地と製品を製造し続けました。ウクライナ移民2世のDaniel Dunkoがリ・ブランディングに成功し、展開している現在のマッキントッシュの前身は、こうした中の1社の「Talworth Ltd」という会社で、Charles Macintosh や共同経営者になったThomas Hancockが設立した会社とは全く異なる会社です。その会社である「Talworth Ltd」は1974年に「Traditional Weatherwear Ltd」に社名を変更し、 Daniel Dunkoが入社したのはこの会社でした。 DunkoによるMackintoshのリ・ブランディングの成功に伴って2000年に「Mackintosh Ltd」となり、2007年に日本の八木通商が買収し現在に至ります。Charles Macintosh の元々の直系の「Charles Macintosh India Rubber Company」は、1925年にDunlop によって買収され、2000年には工場を閉鎖し幕を閉じました。「Mackintosh Ltd」の買収により、経営から退いたDaniel Dunkoは、「Mackintosh Ltd」を離れ、2011年から英国の「HANCOCK」というブランド名で、自身の経験とノウハウを活かしたマッキントッシュクロスを使ったコートやジャケットを展開しています。
乗馬を嗜むような暮らしに余裕のある豊かな客層のライディングコートやレインコートで人気を博してはいましたが、高価なことや取り扱いの難しさ、生地の重さ、着心地の悪さ(この頃はゴムも固く、重かった)などから一般顧客への広がりは限られたものでした。しかしゴムを挟み込むことによる防水性能と防風性能は、警察や軍隊の求める機能を満たすものであり、第一次世界大戦時の飛行船や風船の素材、軍の防水服、防水シートとして生まれた軍官からの大きな需要は、その後も英国警察や英国鉄道の制式品として1970年ごろまでの需要を生み続けました。
こうした鉄道会社への支給品や警察、消防などへの官用支給品や、ミリタリー関連で大きな需要を生み出したマッキントッシュ生地の製品でしたが、これらの軍官への支給品は、続々と開発されたナイロンやポリウレタンの新繊維、ゴアテックスなどの高機能素材に置き換えられて行く趨勢には抗えず、廃業と工場閉鎖が続く、先行きの見えない状態へと転落してしまいました。
同じように漁師のための防水着でスタートし、官制品、軍制品への採用によって業績を作り上げたBarbourが1930年代から実用着だけではない一般衣料の開発に乗り出し、「インターナショナル」ビデイル」「ビューフォート」などで名声と業績を作り上げたのに比べて、Mackintoshの道のりはスタートも遅く、ブランドの登録も無く、製造も流通も複数の会社が行なっているという中での険しいものでした。この変革期に、タフな仕事の実用着として求められた質実剛健さを抑え、街着としてのコート作りを模索していた頃の一枚です。
前たてや裾など、切り放しにした端部からのぞく表地とのコントラストが
ボディ全体のルックスを引き締めます。
ライニングサイドにもベンチレーションホールを開け、ポケット口を表地でトリムした内ポケット。袋仕立ての内側を手で掬い縫いにして端を浮かせた、柔らかな膨らみがユーモラスな表情です。時にはライナー側を表にして着てみても楽しめるのではないかと思います。
脇に開けられたベンチレーションのための5つのアイレットは、実用性以外にも、マッキントッシュクロスで作られたものを示すアイコンとしての格別の存在感があります。
左胸に作ったUSELESS(役立たず)ポケットもこのコートのアクセントの一つです。
ゴムでボンディングされたマッキントッシュクロスの面白さは、防水性や生地独特のボリューム感の他に、生地が真ん中のゴムでボンディング(貼り合わせ)された状態になっていることで生地の切断部がほつれない(ほつれにくい)事があります。
マッキントッシュクロスの「ほつれない」特性を活かして、裾と袖口や前端を切り放しにし、この生地だからこそ作り出せるシャープなエッジの面白さと、印象に軽さが加わります。
ライナーのラスティックコットンも裾と前端をボンディングして切り放したシャープな表情。袖口は固めずにラスティックな麻糸のハンドステッチで。経てきた時間の痕跡を示していた袖や裾に残るダメージへの補修。
何層にも色を塗り重ね、着込んで色が剥がれていくと下から別の色が現れてきて、味わいが深まっていくボタンも魅力を高める要素です。
そのままのヴィンテージでは作れないモダンなスタイルと、コンテンポラリーな物には無い時を経た深み。その両方を兼ね備えた1着が、ヴィンテージにも新しい服にも、作り出せないその人自身のスタイルを創り出します。
サイズ 2(Mー小さめL相当 )
肩幅= 44cm
袖丈= 62 cm
バスト= 58cm (脇下)
着丈 = 98cm
イギリス/日本製
フロントファブリック コットンボンディング マッキントッシュクロス コットン/ラバー
バックファブリック ラスティックコットン ブロード コットン 100%
ボタン ペイントボタン&古布くるみボタン
STOREへのリンク
Mid80’ s Vintage ALTERATION Old Label MACKINTOSH Rubberized Cotton Rain Mac
[ALTERATION By Manure Of Drawers] SOLD
試着や他の写真などのご要望がございましたら
お気軽にお問い合わせください。