新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

Vintage British Railways Vulcanized Rubber Rubberized Rain Mac

Vintage  British Railways Vulcanized Rubber Rubberized Rain Mac

 

 

1950-1960 Vintage ALTERATION British Railways Vulcanized Rubber Rubberized Rain Mac 

 

 

 

1997年に民営化で解体された英国国有鉄道会社(British Rail)の前身のBritish Railwaysが社員に支給した、マッキントッシュクロスのコート。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう70年以上も昔に作られ、使用されていたコート。生地は軽めのポプリンのボンディングで、当時としては比較的ライトなマッキントッシュ。

 

 

 

 

 

 

それでもBR支給の必要性を満たすための頑丈さと防水性といった実用面を満たすタフな仕様は、現行のタウンユーズのものにはない迫力を持っています。

 

 

 

 

 

 

マッキントッシュ独特のゴムをボンディングした生地の感触は、70年以上も前のものとは思えないフレッシュさ。着用によるダメージもほぼ見られない滅多に出会えないラッキーピースです。

 

 

 

 

 

 

マッキントッシュの生地は、Charles Macintoshが2枚の布の間にゴムを挟み込んで圧着する製法を開発し、1822年に特許を取得したものです。

 

 

 

 

 

 

Charles Macintoshがマンチェスターで設立したCharles Macintosh India Rubber Companyは、当初の製品の生地のゴムのきつい匂いや、剥離、溶解などの問題から不安定な経営状態が続きました。ゴムのヴァルカナイズ製法を開発し、技術を改良し安定させ共同経営者になったThomas Hancockは、独創的な発明でゴム工業を確立させた、イギリスのゴム工業の父と呼ばれた発明家でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当初のマッキントッシュは、こうした生地の供給が主体で、ガーメントの製造は布地を買い付けた数多くの小さな企業や街の仕立て屋のもので、それぞれが自分達の店名やブランドで販売していました。やがて、この頃に様々な業者が、生地の名前を略して呼んだ呼称「MAC」が、英国でレインコート全般を示す名前となって定着しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から200年も前に発明された防水生地と製法を、今まで受け継いできたマッキントッシュの歴史は、カシミアやツイードのようにスコットランドの伝統産業と呼んで良いものです。マッキントッシュと同じように英国を代表するBarbourの創業は1894年。イングランド北東部のサウスシールズで、北海の悪天候の下で働く漁師など労働者のための実用着として作った「ビーコン」が始まりです。Barbourはその一番の売りであるワックスコットン(オイルスキン)を開発した訳ではなく、帆船の帆の材料として作り出された生地を、帆船から機関船への移行で帆のニーズが先細りになり帆布以外にガーメント製造への進出を画策していた、セイルメーカーのWebster’s社から生地の提供を受けたのです。

 

 

 

 

 

 

マッキントッシュクロスの製品は、乗馬を嗜むような暮らしに余裕のある豊かな客層のライディングコートやレインコートで人気を博してはいましたが、高価なことや取り扱いの難しさ、生地の重さ、着心地の悪さ(この頃はゴムも固く、重かった)などから一般顧客への広がりは限られたものでした。しかしゴムを挟み込むことによる防水性能と防風性能は、警察や軍隊の求める機能を満たすものであり、第一次世界大戦時の飛行船や風船の素材、軍の防水服、防水シートとして生まれた軍官からの大きな需要は、その後も英国警察や英国鉄道の制式品として1970年ごろまでの需要を生み続けました。

 

 

 

 

 

 

こうした鉄道会社への支給品や警察、消防などへの官用支給品や、ミリタリー関連の支給品で大きく業績を発展させたマッキントッシュでしたが、これらの軍官への支給品がその後に続々と開発されたナイロンやポリウレタンの新繊維、ゴアテックスなどの高機能素材に置き換えられて行く趨勢には抗えず、90年代には先行きの見えない状態へと転落してしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じように漁師のための防水着でスタートし、官制品、軍制品への採用によって業績を作り上げたBarbourが1930年代から実用着だけではない一般衣料の開発に乗り出し、「インターナショナル」ビデイル」「ビューフォート」などで名声と業績を作り上げたのに比べて、Mackintoshの道のりはスタートも遅く、ブランドの登録も無く、マッキントッシュクロスを使った製品の製造も流通も複数の会社が行なっていて、Mackintoshはその中の一つに過ぎないという中での険しいものだったようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ウクライナ移民2世のDaniel Dunkoがリ・ブランディングに成功し、2007年に日本の八木通商が買収し展開している現在のマッキントッシュの前身は、こうした中の1社の「Talworth Ltd」という会社です。「Talworth Ltd」は1974年に「Traditional Weatherwear Ltd」に社名を変更し、やがて Daniel DunkoによるMackintoshのリ・ブランディングの成功に伴って2000年にようやく「Mackintosh Ltd」となりました。

 

 

 

 

 

 

BRの仕様品のトレードマークの迫力のある漆黒のMAC。真っ黒なカラーが着る人と一緒にどんな風に変化していくのかが楽しみです。

 

 

 

 

 

 

ライナーはマッキントッシュと同じく、イギリスが生んだ高機能素材のVentile clothです。英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時にも、水の浸入を防ぐとともに内部の空気を逃さず浮力を確保して、救助を待てるようにと考えられた生地という事が、よく知られています。

 

 

 

 

 

 

長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げて、外からの水は遮断しつつも、内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さ、という四拍子を備えた独自の位置付けを確立した生地です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脇に開けられたベンチレーションのための5つのアイレットは、実用性以外にも、マッキントッシュクロス製品ということを示すアイコンとしての格別の存在感があります。

 

 

 

 

 

 

ライナーサイドにもベンチレーションと内ポケットを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴムをボンディングしたマッキントッシュクロスの面白さは、防水性や生地独特のボリューム感の他に、ゴムでボンディング(貼り合わせ)されることで生地の切断部がほつれない(ほつれにくい)面白さがあります。このコートではこのマッキントッシュクロスの「ほつれにくい」特性を活かして、裾と袖口や前端を切り放しにして、この生地だからこそのシャープなエッジの面白さと、ボリュームと迫力のせいで重く見えがちな印象に軽さを加えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い着丈と、たっぷりとした裾の蹴回し分量が作るトラペーズラインが、迫力のあるフォルムを描きます。

 

 

 

 

 

 

そのままのヴィンテージでは作れないモダンなスタイルと、新たに作られたコンテンポラリーな物には無い時を経た深み。その両方を兼ね備えた1着が、ヴィンテージにも新しい服にも、作り出せないその人自身のスタイルを創り出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイズ 2(大きめM相当 )

 

裄丈(ラグランスリーブ)= 85cm=(肩幅 48cm袖丈 61 cm 相当)

バスト= 55cm (脇下)

着丈 = 110cm 

イギリス/日本製

フロントファブリック = ラバーボンディング マッキントッシュクロス               /コットン/ラバー
バックファブリック  = Ventile cotton cloth/Cotton 100%                    コットン 100%
ボタン       = 積層ペイントオリジナルボタン&古布くるみボタン 

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1950-1960 Vintage ALTERATION British Railways Vulcanized Rubber Rubberized Rain Mac

[ALTERATION By Manure Of Drawers] SOLD