新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

Vintage Imperial College London Cricket Club Sport Blazer

Vintage  Imperial College London Cricket Club Sport Blazer

 

1950-1960 Vintage Alteration Imperial College London Cricket Club Sport Blazer

 

 

日本ではブレザーと言う名前は、IVYファッションの象徴として刷り込まれています。アメリカがルーツでネイビーカラーでウールのフラノでナチュラルショルダーでセンターフックドベントっていうブルックスブラザーズの物がステレオタイプとして思い浮かび、真面目そうな学生や若者が着る服という印象が強いのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Blazer」の語源は1830年頃のケンブリッジ大学のボート部のユニフォーム(シングルブレストの真っ赤な物)という説と、同じ頃の英国軍艦ブレザー号のユニフォーム(こちらはネイビーのダブルブレスト)という説がありますが、何れにせよルーツは英国という事です。

 

 

 

 

 

 

英国では、テーラードデザインのスポーツ・ジャケットもブレザーと呼びますので、Paul Harndenのリネン/ウールのツイードの物も、HOWARD HARDYの高級な生地をサビルロウのHENRY POOLEで仕立てたビスポークも、Vivienne Westwoodのラペルがハートになったものも〝Blazer〟なのは、日本人にはちょっと違和感のあるところ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな英国の数多あるブレザーの中の、70年ほど前に仕立てられた一着です。このブレザーは1907年創立のロンドン大学のカレッジの1つだった名門校、Imperial College London(インペリアル・カレッジ・ロンドン)のクリケット部のクラブユニフォームのヴィンテージです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インペリアル・カレッジは2014/2015年度の世界大学ランキング2位(1位はマサチューセッツ工科大学(M.I.T)で、15人のノーベル賞と2人のフィールズ賞受賞者を輩出している全世界における最難関大学の一つです。

 

 

 

 

 

 

ノーベル賞の受賞者以外にも「タイムマシン」や「透明人間」で知られSF小説の父と評されるH.G.ウェルズや、インドの第9代首相ラジブ・ガンジーなど多数の著名人が卒業生2名を並べています。ユニークな所では、クイーンのギタリストブライアン・メイはこの大学で天体物理学を専攻し、バンド活動により中断していた論文を2008年に書き上げて博士号を獲得しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の旗に掲げられているのと同じ、校訓である「Scientia imperii decus et tutamen = 知識、それは帝国最上の栄光そして防衛」が刻まれたエンブレム。大英帝国によって創設された科学機関であることを示すこの言葉通り、この大学は理系に特化した世界トップレベルの大学です。

色が褪めて歪み、浮き上がったモールや、陽に焼けた基布など、経てきた年月による風化が、本当に趣深く得難い風合いを醸しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

袖口辺りに見られた、元のオーナの愛着、愛用の証のダメージにはパッチを細やかなステッチでかがり、擦り切れにはダーニング。

 

 

 

 

 

 

開きを作ったことで必要になった手かがりのボタンホール。オリジナルのボタンも幾つか残っていましたが、このブレザーは仕立て主のこだわりだったのか、カレッジブレザーに良く見られるメタルボタンではなく、ホーンボタンが使われていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3か所あるポケットは、端を抑えステッチで叩きつけた平面的なパッチポケットで、ウエストポケットのフラップはありませんでした。そのポケットを一度解体し、裏地をつけて袋縫いに縫い合わせ、フォルムも丸みのある形に変更して立体感を加えました。端を浮かせて内側だけを手で掬い縫いすることで、さらにふくよかで柔らかい味のあるポケットとなりました。新たに作ったフラップも表情を加えています。

 

 

 

 

 

 

筒そでの袖口に、手仕事ならではの変形の本切羽を作り開きのある形に変えたカフス。元は袖丈の調整用の遊びや余りが全く無い仕立てなので、額縁など作り得ず、ギリギリをやりくりしながらの作りです。でも、こうすることで得られる袖口の表情の豊かさは、着こなす上での楽しさを倍増させてくれるはず。

 

 

 

 

 

 

タフな着用感がこのブレザーが単なるお洒落のための外出着では無いことを物語ります。上襟や袖、ヘムなどのダメージへ施したdarningが、この頃の暮らしを飾ります。

 

 

 

 

 

 

ネイビーの色合いが深く風合い豊かなウールフランネル。ヘムをラウンドさせ、襟周りを含めたコバのステッチを解いて取り除いてふくらみをもたせたフォルムは、クラシックかつモダンなスタイルを作り出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーベントのボディに作ったサイドベンツは、カジュアルなアイテムに深みと上質さを加えます。手仕事だからこその変形のスリットは手縫い皺も美しい柔らかな仕様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュプラの古い裏地を外し、内側に溜まった埃を取り除き、手でまつりつけたライナーの生地と色のコントラストや手縫いの縫い皺の作るふくよかな皺が、古着にまとわりつく不潔感を消し去り、さらに古着につきまとう重い印象を払拭し、現代的な印象へと変化させる要素です。

 

 

 

 

 

 

ラスティックなコットンブロードは、適度な張りとシワ感が有り、インドで織られた素朴な糸の表情が魅力です。

 

 

 

 

 

 

当時、このような名門校に通われた方々は、当然裕福な方が多く、さらにその中でも選ばれた少数の人々しか手にいれる(仕立てる)事が許されないはずのこういった、クラブブレザーはその人の誇りと思い出の象徴です。同窓会や母校の集まりには勇んで着込んで行かなければいけない物ですし、オーナーの存命中は現役の勝負服なのだと思います。死後も思い出とともに箪笥やクローゼット、で保管され、捨てられたり、ましてや古着商に売り渡す事など考えられないというものであろうだけに、こういう形で扱えた事自体、かなりの僥倖で、この1着はとても珍しく貴重な物だ思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレザーの中のブレザーと呼べる貴重な1着を、ただ「希少で貴重で古いもの」という点だけが魅力の1着という事で終わらせるのでは無く、ヴィンテージの持つ趣を、現代的な着装や感覚と融合させ「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた1着です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイズ 2(Sから小さめのM相当 )

肩幅 =40cm 

バスト=50cm(脇下)

袖丈 =62 cm 

着丈 =68cm

イギリス/日本製

表地   ウールフランネル                ウール100% 

ライナー ラスティックコットン          コットン100%

ボタン  バッファローホーンボタン(ランダムチョイス)

 

 

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1950-1960 Vintage Alteration Imperial College London Cricket Club Sport Blazer

[ALTERATION By Manure of Drawers]  SOLD

 

 

 

 

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