新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

Vintage French Nep Yarn Tweed Classic Style Coat

Vintage French Nep Yarn Tweed Classic Style Coat

 

1930-1940 Vintage French Nep Yarn Tweed Classic Style Coat

 

 

素朴でありながらモダンな表情を持つ生地と、たっぷりしたフォルムのオールドツイードの魅力溢れるコートです。フランスならではの味のある生地と立体的な仕立ては、英国のかっちりとしたテーラーワークとはまた違った良さに溢れています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たっぷりとした身幅から裾に向かって緩やかに広がるシルエットは、コンパクトに変更した肩とのバランスの対比がユニークな味わいを深めてくれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衿のフォルムを少し変え、この頃らしいしっかりとした芯を取り除き、肩のパッドを外し、今着る服へするためのALTERATIONを行ったコートです。

 

 

 

 

 

 

古いキュプラの裏地をイギリスが誇る防水防風素材のVentile clothに付け替えて、全体に張り感やボリューム感を与えるとともに、表地とのコントラストの面白さと、Vintegeにつきまとう不潔感を解消し、さらに風を通さず温かく清潔で明るくモダンな表情を与えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライニングしたのは、イギリスが生んだ高機能素材のVentile clothです。英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時などに、水に浸かることによる体温の低下を防止するために開発されました。体を濡らさないための水の浸入を防ぐ機能は、同時に内部の空気を逃さず浮力を確保することにもつながり、救助を待つために水の中で浮かんでいることに費やす体力の消耗を減らすことにも貢献します。

 

 

 

 

 

 

長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げることで、綿繊維の毛羽を稠密にすることによって撥水性が発揮される生地です。長時間水に濡れることで水が浸透すると、その水分によって繊維自体が膨張し、より織り組織が緊密となってそれ以上の水の透過を遮断するという特徴を持っています。この自然素材だけで生み出された高機能さは、日本でも防衛庁の海難救助服に採用されるほどの実績を現代でも持っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ventile clothを作るために必要な長繊維のコットンは、全世界の綿の総収穫量のうちわずか2%しか取れません。だからVentile clothは高価で希少で、生産できる工場も非常に限られています。

 

 

 

 

 

 

Ventile clothはラバーコーティングやワックスによる防水加工と違った内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さという四拍子を備えた独自の位置付けを確立しています。

 

 

 

 

 

 

ターンアップカフのように袖口に折り返しをつけた粋なデザインのカフ。袖に縫い閉じられていた折り返しに裏地をつけて離し、ボタンで止め付ける形に変更し、より動きのある表情に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経てきた年月の証の小さなダメージ。それを隠すのではなく、繕いを魅せる為のダーニング。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒さだけではなく風と雨にも対抗するために、脂分の残る毛や頑丈な死毛(ケンプ)を多く含ませた英国の質実剛健なツイードとまた違った趣のあるフランスのツイード。適度な厚みがありながら柔らかさとふくよかな風合いを見せる生地は、フランスの国柄を表している気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベージュ、ミディアムグレー、オフホワイト、ライトブラウンなどが入り混じるメランジ糸のベースに、ブラウンとオフホワイトのネップが散りばめられた奥行きのある複雑な色合いは、80年も昔の生地なのだということを忘れさせるほど現代的な表情を持っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘムを軽くするために表地から浮かせてつけたライニングの裾。適度なボリュームを持たせるために深い見返しをつけ、ハンドステッチでアクセントを添えています。

 

 

 

 

 

 

ライニングを縫い合わせる手仕事によるブラインドステッチ。ミシンで縫えば数分の仕事に、その十数倍の時間をかけることの意味がきっとあるはず。

 

 

 

 

 

 

衿やフロントのヘムを押さえていたステッチを解いて、緩やかなふくらみのある表情に。

 

 

 

 

 

 

解体した時に顔を出した裾や縫い目の裏側の埃と一緒に、長い年月がこびりついたポケットの埃も全て取り除きます。そしてポケット口の内側とポケットの袋布はラスティックコットンで作り替え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つの内ポケットはラスティックコットンの裏貼りをつけ、内縫いで縁を浮かせた膨らみのある表情のポケットに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通常のコートよりも間隔を狭くして数を多くしたボタンの配置。こうしたことで、フォルムの変化などさせなくても、Classicスタイルのコートにモダンな表情が加わります。もとからあったボタンホールも糸を解いて、新たに作ったボタンホールと揃えて同じリネンコードを使ってかがりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボタンは英国の1950-1960年代のVintageのデッドストック。通常見られる角のボタンのほとんどは水牛の角から作られているもので、主としてアジア圏の水牛の角をアジア圏で加工したもの。このボタンは、英国の有名紳士服ブランドの注文により特別に作られた、英国の牛(ヘレフォードやアバディーンアンガス)の角を使って英国で作られたもの。

 

 

 

 

 

 

4-6mmという厚み、裏側の皮付き仕上げ、ブラウン、ブラック、乳白、透け感のあるベージュと濁ったベージュなどが自然に入り混じった角の色合い、27mmという大きさ、モダンな印象をも感じさせる、間隔が広く大きな穴の4つのボタン穴、丸く切り出した形を粗く削っただけで素のままの表情を活かした風合い、どこを取っても迫力と良さしかない60年以上も前の逸品のボタンです。発見されたストックが72個だけの貴重で珍しいボタン。

 

 

 

 

 

 

左ポケットのあたりに手で縫いつけて作ったuselessポケット。この小さなポケットはvintageのフラットな顔立ちに加えるちょっとしたアクセント。

 

 

 

 

 

 

現代では再現不可能な貴重な1着を、ただ「希少で貴重で古いもの」という点だけが魅力の1着という事で終わらせるのでは無く、「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた一着です。

 

 

 

 

 

サイズ △(カスタマイズサイズ)

肩幅 =44cm

袖丈 =65cm 

バスト=58cm(脇下)

着丈 =103cm

 

フランス/日本製

表地   Nep Yarn Tweed      /       ウール100% 

ライナー Ventile Cotton Cloth   /    コットン100%

ボタン  1950-1960 Vintage British Cow  Horn Button

     & アンティークファブリック包みボタン

 

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1930-1940 Vintage French Nep Yarn Tweed Classic Style Coat

[ALTERATION By Manure of Drawers]  SOLD