Mid 19th Century French Antique Hand Woven Woad Dyed Indigo Linen Maquignon Coat
藍染めは、植物に含まれる藍の色素( インディゴ) を抽出し、糸や布地などに酸化反応で発色させ定着させることで、地域ごとの気候風土や文化に根ざし、古くから世界各地で行われてきました。藍染めを可能にする植物は、世界中に存在していて、日本ではタデ藍、インドではインド藍がよく知られています。
ヨーロッパでのインディゴ染色は、16世紀頃まではウォード(Woad=あぶらな科の細葉大青)という植物による独自の藍染め方法で行われ、10世紀頃にその方法が確立されたと言われています。最盛期にはフランス・ラングドックやドイツ・エアフルトは藍の交易で大いに栄え、ラングドック地方の中でもトゥールーズはこの中心地として、今も窓枠やドアなどがWoad藍で青く染められた建物が多く残っています。
Woadから抽出された青の染料は南仏の言語のオック語では[PASTEL]と呼ばれ、10世紀から16世紀には唯一の青色染料として重宝されました。この青は絵画に残る聖母マリアやフランス国王が纏う衣服の色も、従来の赤色から青色に代えるなど、フランス人の色に対する概念に大きな変化をもたらしました。ナポレオン軍の兵士の制服やフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」のモチーフとなったモデルが着ていた衣装の青もWoadで染められたものと考えられます。
PASTEL染料(=Woad藍)は希少価値の高い染料で、他の植物染料と異なり、薬剤を一切使用せずに化学染料と同等の堅牢度を保つことができるほか、染料にバクテリアが生息しているため経年劣化しにくく、100年経っても美しさが色褪せないと言われています。
このように優れた性質を持つWoadでしたが、欠点としてはインディゴの含有量がインド藍に比べると少なく、さらに染料の製造工程が複雑なことなどから高価な染料でした。15世紀にバスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓し、インドから綿に並んでインド藍が輸入されるようになると、値段や染色性、発色の良さからWoadは衰退し、さらに20世紀初頭の化学的に製造された合成インディゴの開発によって絶滅してしまいました。今では限られた人たちへ向けた嗜好品として、小規模で特殊なマーケットが残るのみとなっています。
19世紀中期にフランスで作られたWoadによるインディゴ染めの生地で仕立てたコートです。ネップ感に溢れたリネン糸を、手織りで織り上げたラスティックなWoad染めの150年前の生地は、非常に貴重で希少な存在です。
Woad染めのインディゴ特有のクリアで澄んだ青の発色が美しい生地。今見られる合成インディゴ染料やインド藍の色味と比べて赤みが少なく、濁りの無い、まさに「青」。
合成インディゴ染料やインド藍と違って堅牢度の高いWoad藍の、150年経っても色褪せない青。インディゴの含有量が少なく、他のインディゴ染料のように深く濃く染めることはできないのですが、染め上げられた色の退色や色落ちの少なさは、それを十分補って余りある存在感。
150年以上前の物とは思えない野趣溢れる骨太な生地のテクスチャーと、ミニマルで立体的なパターンの組み合わせは現代的な意外性に溢れています。
しっかりとした厚みと重量感のあるリネンの生地は、Biaudeに使われるVilletteの繊細な表情とはまた違った迫力を持ち、洗練や洒落っ気とは全く違った農業大国フランスの骨太さが伝わる、無骨さと素朴さが溢れています。
ライニングしたのはイギリスが生んだ高機能素材のベンタイルです。英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時にも、水の浸入を防いで体温の低下を防止して、それとともに内部の空気を逃さず浮力を確保して、救助を待てるようにと考えられた生地という事は、よく知られています。
長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げることで、綿繊維の毛羽を稠密にすることによって撥水性を発揮させ、さらに長時間水に濡れることで水が浸透しても、水分による繊維自体の膨張が水の透過を遮断して許さないという自然素材だけで生み出された高機能さは日本でも防衛庁の海難救助服に採用されるほどです。
内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さという四拍子を備えた独自の位置付けを確立した生地です。
手でまつりつけたライニング。手の温もりではなくストイックさを伝える不揃いなステッチ、縫い皺の表情や生地のコントラストが乾いた奥行きを作り出します。
生地に残るダメージの補修。決して加工では再現することのできない、長い時間を映し出してくれます。
端部を浮かせて手縫いした、丸みのあるソフトなフォルムのポケット。
ボタンは英国の1950-1960年代のVintageのデッドストックです。通常に見られる角のボタンのほとんどは水牛の角から作られているもので、主としてアジア圏の水牛の角をアジア圏で加工したものです。このボタンは、英国の有名紳士服ブランドの注文により特別に作られた、英国の牛(ヘレフォードやアバディーンアンガス)の角を使って英国で作られたものです。
4-6mmという厚み、裏側の皮付き仕上げ、ブラウン、ブラック、乳白、透け感のあるベージュと濁ったベージュなどが自然に入り混じった角の色合い、27mmという大きさ、モダンな印象をも感じさせる、間隔が広く大きな穴の4つのボタン穴、丸く切り出した形を粗く削っただけで素のままの表情を活かした風合い、どこを取っても迫力と良さしかない60年以上も前の逸品のボタンです。
リネンのハンドステッチが効いた、少し厚みを持たせたライニングの裾や、シームのハンドステッチ。リネンコードの手縫いのボタンホール。
1900年代初頭のMaquignonのコートから原型を作成した、体のラインに沿う肩傾斜や腕の稼働の必要性に合わせて曲線を描きだす美しい袖の作りを生かしたコートです。しっかりとしたボリュームがありながら、柔らかな曲線を描くシルエットが貴重な生地と融合した1着です。
サイズ2
肩幅 = 48cm
バスト= 55cm (脇下)
袖丈 = 60cm
着丈 = 95cm
フランス/日本製
フロントファブリック = Hand Woven Woad Dyed Indigo French Linen / Linen 100%
バックファブリック = Ventile Cotton Cloth / Cotton100%
ボタン = Dead Stock British Cow Button
& Antique Fabric Covered Buttons
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Mid 19th Century French Antique Hand Woven Woad Dyed Indigo Linen Maquignon Coat
[STANDARD By Manure Of Drawers] SOLD