新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

Vintage French Corduroy Hunting Jacket

Vintage French Corduroy Hunting Jacket

1940-1950 Vintage French Paysane Corduroy Hunting Jacket

 

 

 

フランスでは9月の下旬頃に狩猟が解禁になり、秋が深まり出すと、市場の店先にジビエが並び始める食の秋が本格的に始まります。ヨーロッパの中でいちばんの狩猟国であり、ジビエを楽しむ文化も根底に持つフランスでは、プロの猟師だけではなく、秋の狩猟解禁を多くの人々が待ち望んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスではレジャーやスポーツとしてのハンティングは、サッカーに次ぐほどの人気を持つ競技だと言われています。狩猟免許を持つ人数が120万人以上(ほとんど男性)というのは、狩猟免許取得資格のある、16歳以上のフランス男性の約5%に相当し、サッカー愛好者の220万人に次ぐ人数で、テニス愛好者の110万人よりも多いのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生活の糧を得るための仕事として猟をする猟師以外にとってのハンティングは、貴族などの特権階級と裕福な層の楽しみであり、贅沢な遊びでしたが、徐々に幅広く楽しまれるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動物のモチーフが浮き彫りで象られた金属のボタンは、高機能と高性能を追い求め、化学繊維とファスナーとスナップボタンで構成された現代のハンティングウェアが、捨て去ったものが残っていた頃の、趣味やレジャーとしてのハンティングを象徴するものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アトリエコートやワークジャケットにも、実用性や機能性を満たす為だけなら、必要のない装飾的な要素を忘れないモード発祥の国フランスらしく、金型をわざわざ作ってボタンに動物のモチーフを刻みこんでいます。。少し塗装が剥がれたり、色のくすみがあったりするボタンには、このジャケットに刻まれた80年近い時間の痕跡が刻み込まれています。

 

 

 

 

 

 

このジャケットには狩りの獲物を入れるゲームポケットは作られていません。元のオーナーはハンティングに同行はするものの自分は狩りをしない、あるいは獲物を自分で運ぶ必要のない人(使用人や部下に運ばせることができる)だったり、ゲームポケットに入る小型の野ウサギや野禽類の狩りをせず、鹿や猪といった大型の四つ足動物だけを獲物として狩りをする人だったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型の四つ足動物の狩りは、野ウサギなどよりも狩りとしてゲーム性が高く、長らく貴族階級にしか許されない狩りでした。このジャケットのオーナーはある程度の地位にあった人なのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生地は秋から冬にかけての狩猟シーズンにふさわしいコーデュロイです。深いブラウンの太畝のコーデュロイは、頑丈に織り上げられ80年近く経ったものとは思えない状態です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太めの糸で驚くほどしっかりと高密度に織られた、キャンバスのような張りのある基布の太畝のコーデュロイ。長い時間が経っても毛羽の抜けや色褪せなど、ほとんど見られない頑丈な生地は、今では探しても見つけられないこの時代の独特のものです。

 

 

 

 

 

 

 

日本では[ダミアンコーデュロイ]などと呼ばれるこのコーデュロイは、フランス北部のAmiens(アミアン) で1793年にPierre Cosseratによって創設されたCossera社が作り出しました。Amiensはフランスの北部、パリから北へ150km、電車で1時間20分の距離にあるフランスで30番前後の人口を持つ都市で、『北の小さなヴェネツィア』と呼ばれ、運河や水上庭園、アミアン大聖堂が有名な町です。中世の頃からヨーロッパのインディゴ染料であるwoad(ウォード)の栽培が行われていたこの辺りは、布地の生産も盛んに行われ、リネンとモヘアで織られたユトレヒトベルベットやヴェルール・ダミアン(velours d’Amiens)など高級なベルベット織物の産出地でした。

 

 

 

 

 

 

Pierreの息子のEugèneはそれまでの手織り織機の機械化に着手し、工場の規模を大きくするとともに単価を下げて販路を拡大。その息子のOscarの時代にさらなる販路を求めて開発されたのが、労働者の作業服に向けた頑丈なコーデュロイで、最盛期には1800人の労働者を擁するまでの規模となりました。しかし、これらの生地も安価で高機能な化学繊維と、東欧やアジア圏からの安価な製品の流入に抗えず、経営は悪化。2004年からは、ドイツのCord&Velvetonの傘下となりましたが、2012年に閉鎖され、Cosserat社の歴史は終焉を迎えました。Cosserat社の残したレンガ造りの建物は、日本の富岡製糸場のように、フランスの繊維産業の歴史的建造物であり、世界遺産としての登録を求めた運動がなされ、候補として認められました。

 

 

 

 

 

趣味性の高い実用着として作られたものですが、ものすごくしっかりと丁寧に仕立てられていて、身頃にはしっかりとした上質な芯地が使われていました。

 

 

 

 

 

 

ラウンドしたパターンの襟周りの表情は、フランスのヴィンテージならではの独特の雰囲気が漂います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸の形に合わせるためのカーブを描く前身頃のヘムライン。腕の形に沿って曲線を描く袖。フランスならではのテーラードの基本に則った立体的なパターンで仕立てられたジャケットは、ハンティングの為につくられた機能性だけではなく、フランスのエスプリ精神と美しさと力強さに溢れています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オリジナルのライニングを未晒しのベンタイルに変更し、ヴィンテージの重いイメージを中和して、清潔でモダンな印象と着込まれた風合いを両立させたジャケットになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英国が誇る防水防風素材のベンタイルは、英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時にも、水の浸入を防ぐとともに内部の空気を逃さず浮力を確保して、救助を待てるようにと考えられた生地という事は、よく知られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げて、外からの水は遮断して、内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さという四拍子を備えた独自の位置付けを確立しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスのヴィンテージウェアとして秋冬シーズン代表格での人気の高いハンティングジャケット。年代とコンディションのバランスの良いものは年々希少になり、どんどん高額になり続けています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンタイルライナーの取り付けと裾まわりの手の仕事。硬い生地を一針一針、丹念に縫い止めたステッチの手仕事ゆえの自然な乱れは豊かな趣を与える時間の結晶です。

 

 

 

 

 

 

ベーシックでありながらどこかモダンな佇まい。そんな、古いだけ、新しいだけでは、出来ないことができる服。服に骨董的な価値だけや、自分を高く見せる値札の役目を求めない人達の為の、ただのビンテージをやめた服。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイズ 2+(ルーズめな46~48)

肩幅   =45 cm

袖丈 =60 cm

バスト=60cm(脇下)   

着丈 =73cm

フランス/日本製

表地  = Heavy Weight Corduroy               コットン100%

ライニング = Ventile Cotton Cloth        コットン100%

ボタン  =ヴィンテージ動物レリーフボタン(ランダムチョイス)

      +アンティークファブリック包みボタン

 

 

 

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1940-1950 Vintage French Paysane Corduroy Hunting Jacket

[ALTERATION By Manure of Drawers]  SOLD