French Vintage DeadStock IndiaInk Dyed Rustic Indigo Linen Fabric Made Mquignon Coat
60年ほど昔に織られたインディゴ染めのフレンチリネンの生地を使った、フランスのMaquignonと呼ばれた人達のワークコート。
今なお世界のリネン原料のフラックス(亜麻)生産の70%を生み出し続けるフランスは、文字通りのリネンの国です。温帯から熱帯の気候を必要とする綿の栽培が難しいフランスで、栽培が可能な亜麻は、衣類のみならずシーツなどの寝具や寝間着などのホームリネンから、テーブルクロスやナプキンなどのテーブルリネンにも使われフランス人にとっては綿以上に生活に密着した最も身近な繊維です。
近年では中国などの紡績技術の発展により、原料栽培以外の工程(特に潤紡よる紡糸はほとんど中国)はフランス以外で行われ、リネンを糸にする紡績工程は国外がほとんどとなりました。しかし、この生地が作られた時代では、フランス国内で栽培、紡績、製織された真正のフレンチリネンと言える生地が作られていました。
生地はインディゴ染めのリネンをさらにブラックに染めた生地。昔のMaquignonと呼ばれた人達が着ていた衣服に使われたVilletteと呼ばれる生地と同じような染付けがされています。
このvilletteと言う名前がもともと意味していたのは、パリの北東部にあった家畜・食肉市場のLa Villetteの事です。1974年に閉鎖され、今ではパリ最大の再開発公園地区となっているLa Villetteはフランス全土から家畜・食肉業者が集まる巨大な市場で、その周りには関連する商品を販売する商店も集合していました。
Villetteという名前はやがて市場を指す言葉から広がって、ここに集まる業者の仕事着や、その仕事着に使われる生地(ブラックにオーバーダイされたリネン生地)までを意味するようになりました。この生地はそうした業者のものです。
写真は1850年あたりの、La Villetteのものです。BiaudeやVilletteと呼び名のついたワークコート(後のアトリエコート)を着た人々の姿が映っています。Biaudeを着て、牛や馬を引いて続々とパリの街中の市場へ集まってくるMaquignonや家畜業者の姿は、きっと普通の市民にとっては印象深い光景だったのだろうと思われます。
このMaquignonと言う呼び名は、牧畜業(馬や牛の放牧や仲買い人)や家畜・食肉市場に携わった人々のことです。オランダ語のmakelare(仲介や交渉)から派生した名称で、当初は馬のディーラーを指していましたが、やがて馬主や飼育業者までを指す言葉となっていったようです。
Maquignonの仕事着として最初に用いられたのは、Biaudeと呼ばれるギャザーのたっぷり取られたスモックです。仕事や作業をするときの上っ張りとして、古くからの民族衣装が転用されて発達したのだと思われるこのワークウェアは、都市部や工場などで産業の発達とともにスタイルが出来上がっていった、一般的にイメージされる“フレンチワーク”と呼ばれるワークウェアよりも深いルーツに根ざしていて、ひときわ異彩を放つフォルムに深い趣きがあります。
フランスの馬の飼育ではノルマンディーが有名ですが、フランスにはもう一つオーベルニュ(Auvergne)地方というフランスの中央山塊の農業条件不利地域があり、この地域のカンタル県でも馬飼育の長い歴史があります。耕作に適さない山地のAuvergneでは、牛飼養農家が全体の約70%を占め、残りを羊飼養と馬飼養、耕種農業が構成しています。このAuvergneの民族衣装だったインディゴ染めのリネンのスモックが、この地へ馬の仲買いにやってきた人々に広がっていったのではないかと言われています。
Biaudeはその特徴的なフォルムに非常に魅力のある仕事着ですが、真四角のパーツを組み合わせた作りは、肩の収まりが良いとは言えず、また広い身幅と同じ肩幅があるため、落ちた肩に合わせた短い袖が動きを妨げ、着心地の点では難点がありました。20世紀に入ると、19世紀からの主流だったリネンのBiaudeの民族衣装の流れをくむプルオーバースモック形は、より着やすい前開き型になりました。畜産業の近代化、産業化、規模拡大が進むにつれて、仕事の伝統色よりも効率や利便性が求められました。やがて、Maquignonが着る作業着として伝統的なブラックインディゴ染めのリネンのbiaudeは一部地域の民族衣装として残るのみとなりました。
フランスのワークウェアの良さは、テーラーワークを基本にしたパターンと縫製が作り出す立体的で曲線的なデザインと、雰囲気溢れる生地の表情。アメリカやイギリスのように、コントラストをつけた太く頑丈なステッチが、2重3重に入るタフで無骨なワークウェアとは全くの別世界の代物です。
働く人達のために生まれ、機能性の求めに応じて考えられた物であるはずなのに、「着心地」と「デザインの洗練」を忘れないのがモード発祥の地、フランスのエスプリ精神の形なのだと思います。
しっかりとしたのリネン糸で、ざっくりとした織り目に織り上げた生地はまだ多くを職人の手仕事で麻を処理し、糸を紡ぎ、織り上げた時代のもの。脇やアウトシーム、パッチへのハンドステッチが作り出す味わい深い凹凸。
麻の良い部分だけを集約したかのような昔の生地特有の素朴な趣きを残す風合い。表面のブラックと下のインディゴが入り混じった深い色合い。着込んで行くにつれ、ブラックが落ちてさらにブルーへと変化していく楽しさ。これからの変化が、着る人の愛着の証です。
体のラインに沿う肩傾斜や テーラーのような袖付けと、腕の稼働の必要性に合わせて曲線を描きだす美しい袖の作り。しっかりとしたボリュームと大きさがありながら、柔らかな曲線を描くシルエット。
手でまつりつけたライニング。手の温もりではなくストイックさを伝える不揃いなステッチ、縫い皺の表情や生地のコントラストが乾いた奥行きを作り出します。適度な厚みのある未晒しの素朴な風合いとしわが魅力の、インドで織られたライニングは、表地とのコントラストと清潔感を作り出してくれます。
生地の傷んだ部分や欠損した箇所には、vintageからとった生地などでpatchを行いました。決して加工では再現することのできない、創造性を持つ時間を映し出してくれます。
フランスのデッドストックのレジンボタンは、グレーの濃淡の色合いとユニークでミニマルなデザインが、ともすれば古さや重厚さに支配されてしまいそうなイメージに、程よいモダンさと軽さを加えるチューニング。ボタンが狭い間隔で、ずらりと並ぶ姿は印象的です。第一ボタンに選んだ、土の中から掘り出されてきたような緑青をまとったアンティークのメタルボタンが、さらに味わい深めます。
カフスもハンドステッチ。ボタンホールも全て手縫いです。
伝統的なvintageの生地と、今はもう作られなくなった仕事着のフォルム。そこに乾いた手の仕事と現代性を融合させて作り上げた、世界に一枚だけのコートです。着る人の個性と存在感を際立たせる1着です。
サイズ2
肩幅 = 47cm
バスト= 57cm (脇下)
袖丈 = 59cm
着丈 = 100cm
フランス/日本製
フロントファブリック = IndiaInk Dyed Indigo Linen / Linen 100%
バックファブリック = Indian Rustic Cotton Broad Cloth / Cotton100%
ボタン = Dead Stock French Resin Button
& Antique Fabric Covered Button
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French Vintage DeadStock IndiaInk Dyed Rustic Indigo Linen Fabric Made Mquignon Coat
[STANDARD By Manure Of Drawers]
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