1950-1960 French Vintage Cotton/Viscose Doeskin Tailor-made Jacket
高めのノッチと小さなラペル、タイトなVゾーンの70年前の仕立てとは見えない今の着こなしに十分にフィットするテイラーメードのジャケット。この一着は、1950年代のものとしては極めてモダンな部類に位置するとても貴重なものだと思います。
まだ合成繊維が一般人の間にはそれほど身近なものではなく、高級な裏地(キュプラ)や女性のストッキング(ナイロン)、絹の代用品としてのドレス用生地(Viscose)といったどちらかというと女性寄りの用途が多かった頃、Viscoseを男性にとって一番重要なジャケットに仕立てた、当時としては非常に冒険に溢れた1着です。
仕立て主はこの頃の周りの誰もが見たことの無い生地で仕立てたこのジャケットをいち早く身に付け、袖を通す事に、ワクワクした気持ちが漲ったことだろうと思います。
Viscoseとコットンの混紡糸で織られた変わり織のドスキンは、糸自体の柔らかさととろみと、織生地であるのに伸縮性のある生地という機能を併せ持った70年も前の物とは思えない現代的なテクスチャーを見せてくれます。
70年も前に、このような実験的な生地を選んでジャケットを仕立てるという注文主らしい、当時としてはかなり粋なコンパクトなフォルムとフィット感の1着です。短めの丈と丸みを帯びたシェイプに変更したヘムのラインはクラシックな表情を醸します。
フェルトの衿裏をインディゴ染めのリネン生地と取り替え、衿を立てた際の表情に趣を加えました。
深いブラックのシックな印象のソフトでしなやかな生地とは裏腹のタフな着用感。このジャケットが単なるお洒落のための外出着では無く、普段着も仕事着を兼ねていたことを物語ります。ダメージへ施したdarningとPatchが、この頃の庶民の暮らしを飾ります。
手かがりのボタンホールや衿周り、その他随所に加えた手の仕事。
ダメージを飾るパッチとダーニング。ステッチを解く事で、端々衿や裾に空気を含んだ豊かな表情が生まれます。
フラップ裏もラスティックコットンにとりかえて、コントラストと動きと清潔感のある豊かな表情。
閉じられていた袖口は、変形の本切羽に作り変えました。開けても折り返しても、現代的なニュアンスを醸し、着こなす楽しみを広げるポイントになりました。
ノーベントのウエストはサイドベンツに作り変え、オーセンティックで動きのある表情とアクセントを、後ろ姿に加えました。
裏地と表地の縮率差が生み出すしわ、たるみ、つりが作る計算された計算外の面白さが生きる個性的なシルエット。
手仕事だからこその、手縫い皺も美しい柔らかな仕様です。
キュプラのライニングと取り替えた、ラスティックなコットンブロードは、適度な張りとシワ感が有り、素朴な糸の表情が魅力です。
流行やブランドや値段の多寡に惑わされない価値観を持った方々のその人自身を魅せる衣です。
サイズ 2
肩幅 =42cm
バスト=53cm(脇下)
袖丈 =60 cm
着丈 =70cm
フランス/日本
表地 = Doeskin / Cotton&Viscose
ライニング = Indian Rustic Cotton Broad Cloth / Cotton100%
ボタン = Buffalo Horn Button (Random Choice)
& Antique Fabric Covered Button
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1950-1960 French Vintage Cotton/Viscose Doeskin Tailor-made Jacket
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD