1930-1940 Vintage French Heavy Corduroy “Velours d’Amiens” made Old Hunting Jacket
フランスでは9月の下旬頃に狩猟が解禁になり、秋が深まり出すと、市場の店先にジビエが並び始める食の秋が本格的に始まります。ヨーロッパの中でいちばんの狩猟国であり、ジビエを楽しむ文化も根底に持つフランスでは、プロの猟師だけではなく、秋の狩猟解禁を多くの人々が待ち望んでいます。
フランスではレジャーやスポーツとしてのハンティングは、サッカーに次ぐほどの人気を持つ競技だと言われています。狩猟免許を持つ人数が120万人以上(ほとんど男性)というのは、狩猟免許取得資格のある、16歳以上のフランス男性の約5%に相当し、サッカー愛好者の220万人に次ぐ人数で、テニス愛好者の110万人よりも多いのです。
昔、ハンティングは、貴族などの特権階級と裕福な層の為の娯楽でした。生活の糧を得るための仕事として猟をする猟師以外の普通の人々にとっては、贅沢な遊びでした。しかし近代になって、徐々に幅広く楽しまれるようになりました。
これは、90年ほど前のフランスのハンティングジャケットです。まだハンティングが高級な趣味だった時代に、工場での大量生産ではなく、テーラーで注文仕立てで作られた物。高機能と高性能を追い求め、化学繊維とファスナーとvelcroで構成された現代のハンティングウェアが捨て去ったものが、たくさん残っていた頃のジャケットです。
アトリエコートやワークジャケットにも、実用性や機能性を満たす為だけなら、必要のない装飾的な要素を忘れないモード発祥の国フランスらしく、金型をわざわざ作ってボタンに動物のモチーフを刻みこんでいます。。少し塗装が剥がれたり、色のくすみがあったりするボタンには、このジャケットに刻まれた90年近い時間の痕跡が刻み込まれています。
ボタンホールを新たに作り、数を2倍に増やしたボタンがズラリと並ぶ印象的な表情。
このジャケットには狩りの獲物を入れるゲームポケットは作られていません。元のオーナーは獲物を自分で運ぶ必要のない人(使用人や部下に運ばせることができる人)か、ゲームポケットに入る小型の野ウサギや野禽類の狩りをせず、鹿や猪といった大型の四つ足動物だけを獲物として狩りをする人だったのでしょう。大型の四つ足動物の狩りは、野ウサギなどよりも狩りとしてゲーム性が高く、長らく貴族階級にしか許されない狩りでした。
このジャケットが、ある程度の社会的に高い地位にあった人の物だった事は、ゲームポケットが無いことの他にも、工場で作られたものではなく、テーラーでの仕立て仕事による物だという点や、左胸のポケットがフラップの無い箱ポケットになった、とても珍しい仕様になっていることなどからも感じられます。
生地は秋から冬にかけての狩猟シーズンにふさわしいコーデュロイです。ブラウンの太畝のコーデュロイは、頑丈に織り上げられ90年近く経ったものとは思えない状態です。
太めの糸で驚くほどしっかりと高密度に織られた、キャンバスのような張りのある基布の太畝のコーデュロイ。長い時間が経って、少し色褪せて、枯れた良い味わいを深めています。しかし、毛羽の抜けなど、ほとんど見られない頑丈な生地は、今では探しても見つけられないこの時代の独特のものです。
“Velours d’Amiens” などと呼ばれるこのコーデュロイは、フランス北部のAmiens(アミアン) で1793年にPierre Cosseratによって創設されたCossera社が作り出しました。Amiensはパリから北へ150kmの距離にある都市で、運河や水上庭園、アミアン大聖堂が有名な町です。インディゴ染料であるwoad(ウォード)の栽培が行われていたこの辺りは、布地の生産も盛んに行われ、高級なベルベット織物の産出地でした。
ラウンドしたフラットなパターンの襟周りの表情は、フランスのヴィンテージならではの独特の雰囲気が漂います。
腕の形に沿って曲線を描く袖。フランスならではのテーラードの基本に則った立体的なパターンで仕立てられたジャケットは、ハンティングの為につくられた機能性だけではなく、フランスのエスプリ精神と美しさと力強さに溢れています。
擦り切れていた袖口には、複数の種類の生地を使ったpatchと丹念なdarningによる補修を行いました。
オリジナルの旧いライニングを除去して、未晒しのVentile clothに変更し、ヴィンテージの重いイメージを中和して、清潔でモダンな印象と着込まれた風合いを両立させたジャケットになっています。
英国が誇る防水防風素材のVentile clothは、英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時にも、水の浸入を防ぐとともに内部の空気を逃さず浮力を確保して、救助を待てるようにと考えられた生地という事がよく知られています。
Ventile clothは、長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げて、外からの水は遮断して、内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さという四拍子を備えた独自の位置付けを確立しています。
背中にアクセントとして入れたステッチワーク。vintageのリネンコードを丹念に刺して十字のモチーフを描きました。
ventileのliningの取り付けと裾まわりの手の仕事。硬い生地を丹念に縫い止めたステッチの手仕事ゆえの自然な乱れは豊かな趣を与える時間の結晶です。
ベーシックでありながらどこかモダンな佇まい。そんな、古いだけ、新しいだけでは、出来ないことができる服。
服に骨董的な価値だけを求めたり、自分を高く見せる値札の役目を求めない人達の為の、ただのビンテージをやめた服。
サイズ 2
肩幅 =44 cm
袖丈 =60 cm
バスト=53cm(脇下)
着丈 =72cm
フランス/日本製
Outer Fabric = Heavy Weight Corduroy “Velours d’Amiens” /Cotton100%
Lining Fabric = Ventile Cotton Cloth /Cotton100%
Button = Vintage Animal Relief Button (Random Choice)
& Antique Fabric Covered Button
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1930-1940 Vintage French Heavy Corduroy “Velours d’Amiens” made Old Hunting Jacket
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD