新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

1910-1920 Antique French Chore Worker Paysan Rubber Coating Coat

1910-1920 Antique French Chore Worker Paysan Rubber Coating Coat

 

 

1910-1920 Antique French Chore Work Worker Paysan Rubber Coating Coat

 

 

 

昔のフランスのワークウェアの良さは、

何と言ってもテーラーワークを基本にしたパターンと縫製が作り出す

立体的で曲線的なデザインと、雰囲気溢れる生地の表情。

アメリカやイギリスのように、コントラストをつけた太く頑丈なステッチが

2重3重に入るタフで無骨なワークウェアとは全くの別世界の代物です。

 

 

 

 

 

アトリエコートやブルーのフレンチサージのワークウェアなど、一般的な労働着以外にも

食糧自給率が120%を超え、今も 欧州連合(EU)一の農業生産国のフランスには

農業や牧畜に従事する人々向けに作られたBiaudeなど

豊かな感性に彩られたフランス独自の様々な労働着がありました。

 

 

 

 

 

 

防水、高発汗、強靭、難燃。素材はどんどん高機能になり、形も

運動性や作業効率を追求したものへと進化を続けてきましたが、

ファッション的には退化しているに違いないワークウェアの世界。

フランス独特の際立った独自性がどんどん薄まってしまったり、

アイテムそのものが作られなくなってしまったのは残念でなりません。

 

 

 

 

 

 

そんなフランスのワークウェアの中でもこの1枚は異彩を放つ強面な表情。

フランスならではのミニマルで立体的なデザインとパターンでありながら、

野趣溢れる骨太な生地のテクスチャーは、今から100年前の物とは思えない

現代的な意外性に溢れています。

 

 

 

 

 

様々な糸の質感と色合いが入り混じる深い趣を持つ糸は

綿素材を輸入に頼るのに比して自国での栽培が盛んで入手が容易で身近なリネンと

ウールを混紡した糸で、緩めにかけられた撚りがさらに味わいを高めています。

1/1の平織りにざっくりと織られた生地には、

パリやリヨンなどの都市部の勤め人が求める洗練や洒落っ気とは

全く違った農業大国フランスの骨太さが伝わる、無骨さと素朴さが溢れています。

 

 

 

 

 

 

防水・防風性を持たせる為に片面に厚くラバーをコーティングした生地は

量感、質感共にボリュームがあり、ゴムならではの弾力のあるハリ感は

マッキントッシュに通じるようにも感じ取れる感触があります。

 

 

 

 

 

100年経った今でも硬化、脆化、剥離のほとんど見られない状態は

ゴムの加工技術の確立からまだ間もなかった当時の事を考えると

かなりの僥倖なのだろうと思われます。

 

 

 

 

 

 

このようにラスティックな生地を使っても

働く人達のために生まれ、機能性の求めに応じて考えられた物であるはずなのに、

「着心地」と「デザインの洗練」を忘れないのが

モード発祥の地、フランスのエスプリ精神の形なのだと思います。

 

 

 

 

 

 

ビスポークの仕事かと見紛うほど、体のラインに沿う肩傾斜や 

イセの入った袖付けと、腕の稼働の必要性に合わせて曲線を描きだす美しい袖の作り。

しっかりとしたボリュームと大きさがありながら、首の曲線に沿うように

カーブした衿は着こなしの幅も広がる、アルチザンを思わせるミニマルな佇まい。

 

 

 

 

 

全体のフォルムも比較的コンパクトな上半身をウエストで一旦絞り、

蹴回し分量のたっぷりの裾に向けて広げる、エレガントとも思えるシルエットは

大昔のワークウェアとは思えないモダンさがあります。

何層にも色を塗り重ね、着込んで色が剥がれていくと

下から別の色が現れてきて、味わいが深まっていくボタンも魅力を

高める要素です。

 

 

 

 

 

 

絞ったウエストを際立たせるバックベルトがデザインされ、

深いベントが切られたバックスタイルはさらに洗練された佇まいです。

 

 

 

 

 

 

テーラーワークを基本としたパターンメイクと縫製が、

「 ファッション 」 と対極の位置にあるはずの「仕事着」を、

今でも様々なメゾンやデザイナーがモデルとする高みに位置付けています。

 

 

 

 

 

 

この存在自体が貴重で希少なコートにライナーを

ヴィンテージのフレンチリネンコードでライニングし、内ポケットを作り、

ダメージの補修を行うなどのALTERATIONを加えた1着です。

 

 

 

 

 

 

ライニングしたのはイギリスが生んだ高機能素材のベンタイルです。

英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時にも、

水の浸入を防いで体温の低下を防止して、それとともに内部の空気を逃さず浮力を確保して、

救助を待てるようにと考えられた生地という事は、よく知られています。

 

 

 

 

 

 

長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げることで、

綿繊維の毛羽を稠密にすることによって撥水性を発揮させ、

さらに長時間水に濡れることで水が浸透しても、水分による繊維自体の膨張が

水の透過を遮断して許さないという自然素材だけで生み出された

高機能さは日本でも防衛庁の海難救助服に採用されるほどです。

 

 

 

 

 

 

内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、

独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さ

という四拍子を備えた独自の位置付けを確立した生地です。

 

 

 

 

 

 

ハンドステッチでのベンタイルのライニング。

手の温もりではなくストイックさを伝える不揃いなステッチ、

縫い皺の表情や生地のコントラストが乾いた奥行きを作り出します。

 

 

 

 

 

 

着込まれ、働くことを経た事で得た細かなダメージの補修の彩りは

決して加工では再現することのできない、創造性を持つ時間を映す痕跡です。

フラップの裏のコントラストも全体を引き締めるアクセントです。

 

 

 

 

 

 

表地のトリミングとハンドステッチが効いたソフトなフォルムで

端部を浮かせた手のすくい縫いが膨らみと丸みが加えられた内ポケット。

 

 

 

 

 

 

袖口や裾やベントの切り放しのほつれが、少し重いイメージのアイテムに、

軽さとラフさと自由な気分を与えます。

 

 

 

 

 

 

今も多くのデザイナーやブランドが

砂を吹きかけ、石と一緒に洗い、紙やすりで削り、薬品に浸し、

倉庫に眠る古の生地を掘り起こし、100年前の機織り機を修理して生地を織り、

眠っていたミシンに油を注して

過去に遡り、時間を経なければ、簡単には手にすることの叶わ無いものを、

再現しようと努力を続け奮闘しています。

 

 

 

 

 

 

でもそれは、長い時間を経てきたものへの憧憬を形にした、

表層的な作り物にしか、なり得ないのかもしれません。

ここにあるのは、本当に長い時間を経過した痕跡を凝集した本物に、

現代性を融合させたものが形になった一着です。

 

 

 

 

 

 

衣服は骨董的な価値を求めるものではありません。

その時、その時代の「最新」を積み重ねて今に繋がる

輝きを、現代的な着装や感覚と融合させ

「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた

世界に1点だけの存在を楽しんでいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

サイズ 2(M相当 )

肩幅 = 45cm

バスト= 52cm (脇下)

袖丈 = 62cm

着丈 = 109cm 

 

 

フランス/日本製
フロントファブリック  リネン/ウール ラバーコーティング    
バックファブリック   ベンタイルコットン                   コットン 100%
ボタン         ペイントボタン&古布くるみボタン 

 

 

 

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1910-1920 Antique French Chore Work Worker Paysan Rubber Coating Coat

[ALTERATION By Manure Of Drawers] SOLD

 

 

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