新しいけど古いもの

新しいけど古いもの

Old British Harris-tweed Herringbone Over Coat

Old British Harris-tweed Herringbone Over Coat

 

 

 

1930-1940 Vintage ALTERATION Old British Harris-tweed Herringbone Over Coat

 

 

 

しっかりした厚みのある生地と、たっぷりとしたフォルムのオールドハリスツイードの魅力溢れるコートです。

 

 

 

 

 

 

厳しい自然に囲まれた北大西洋に臨むアウターヘブリディーズ諸島のハリス島(ルイス島)で織られるハリスツイードは、ドネガルやシェットランドといったイギリスの様々なツイード産地の中でも特別な物です。寒冷で霧の多い厳しい気候の荒涼とした風景が続く島は、農業を産業にできるだけの収穫を阻む岩と泥炭地に覆われ、痩せた土壌でも生える草でも飼育が可能な牧羊と、周りを取り囲む海での漁業だけが主な産業でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この島で島民が身に着ける物で自給出来たのは、島の気候でも育てられた亜麻(リネン)や麻(ヘンプ)と、羊の毛を利用した織物だけでした。真夏でも最高気温が17度前後という寒冷な気候では、1年を通して羊毛で作った衣服は欠かせないもので、着るものを自給するために家々がそれぞれ羊毛から糸を紡ぎ、自分達で織物にする技術と伝統を育むことは自然な事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に島の大事な産業である漁師達にとっては、厳しい海の自然条件から身を守るための頑丈で温かな仕事着が必要でした。水を弾き浸透させない為にも羊の毛の油分を脱いていない原毛を使い、暖かさを保ちつつ、織り目の隙間を埋める膨らみのある緬毛(ウール)と、張りと強さを出すための粗毛(ケンプ)を混紡した糸でガッチリと厚く、強く織られたハリス島のツイードは、島で暮らす人々の必要が生みだした島の第3の産業なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野生の羊は外側を太く粗く長い「上毛(粗毛、ケンプ)」に覆われていて、その内側に産毛のような短く柔らかく細い「下毛(緬毛、ウール)」がありました。ケンプで作られた糸は質実剛健な頑丈なものではありますが、決して着心地の良いものではなく、柔らかで暖かなウールの方が身に着けるには適しているのですが、家畜化される以前はウールの部分は未発達で取れる量が少なく、利用出来たのはケンプだけでした。やがて羊が家畜化されるに伴い、ウールを発達させるように品種改良が進められた羊からはケンプは退化し、換毛もなくなり、細く柔らかいウールに全身を覆われた究極の羊「メリノ」の誕生に繋がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毛足の長い羊毛を梳き集めて撚られたしなやかでやわらかな梳毛(ウーステッド)と対極的な風合いが持ち味の、粗雑で短い羊毛繊維を主体とした紡毛(ウールン)で作られた生地の中でも、ハリスツイードは伝統に則り、普通は取り除くケンプをあえて含ませ、さらに未脱脂状態のまま紡績されます。

今でも1.手織りであること 2.島に住む織り子さん自身の家で織られること 3.100%ピュアな新しい羊毛で織られること4.糸の撚り、染め、仕上げなど、全工程を島に住む人が行うこと という厳格な条件と伝統が守られているのは、「アイリッシュリネン」が単なる名称だけのブランドになってしまった事と比較すると貴重なことではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

擦り切れてしまったラベル。1940年以前の初期の単色で織り上げられたラベルにもオーブ&クロスのトレードマークが光ります。このマークはハリスツイードを騙るコピー商品の横行を防止する為に登録された、英国初のトレードマークです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手紡ぎに近い方法で糸を紡ぎ、通常(150cm)より幅の狭い(90cm)の昔ながらの手織り織機で織り上げられた肉の厚い、しっかりした生地は今では望み得ないヴィンテージのハリスツイードの本来の姿です。オールドハリスツイード特有のゴワゴワした肌触りとざっくりした風合いを求めて今も尚コレクター、ファンが多いのも納得できる魅力満載の生地です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未脱脂の原毛から紡がれて織られ、本来はオイリーであるはずの生地の油分が年月を経ることで抜けた少しパサついた感触が、ケンプを含む糸の固い感触と相まってオールドハリスツイードにしか作り出せない風合いとなった1着です。

 

 

 

 

 

 

元の裏地が手まつりだった事などからみると、吊し(既製服)では無く、元の持ち主による注文仕立だったのだろうと思います。ボリュームのある生地の重さを感じさせない、職人の綿密な計算が全体のバランスに生かされた丁寧な作りが見事な1着です。

 

 

 

 

 

 

ボディと同じく立体的でボリュームのある衿は、注文仕立ならではの絶妙なバランス感です。第1ボタンはフラットでマットな大ぶりのメタルボタン。仕立て主の遊び心なのか、紛失したボタンを付け替えただけなのかはわかりませんが、意外性のある良いアクセントになっています。

 

 

 

 

 

 

キュプラの裏地をイギリスが誇る防水防風素材のベンタイルに付け替えて、全体に張り感やボリューム感を与えるとともに、表地とのコントラストの面白さと、Vintegeにつきまとう不潔感を解消し、さらに風を通さず温かく清潔で明るくモダンな表情を与えています。

 

 

 

 

 

 

擦り切れた袖口やポケットなどのパッチや、小さな繕いを魅せるダーニングは、経てきた時間の痕跡です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あえて縮率の違う生地を張り、その後の洗い加工によって不規則に発生するシュリンクに、デザインやパターンでは生み出せない計算された計算外の味わいを作り上げさせました。

 

 

 

 

 

 

ポケット口の裏もベンタイルに変更し、袋布も新たに作り直して軽快で清潔なイメージに。

 

 

 

 

 

 

かなりの大ぶりな革の包みボタン。枯れた風合いの革の表情にも良い時間が流れています。裏にはアンティーク布のくるみボタンのちからボタンでとめています。

 

 

 

 

 

 

現代では再現不可能な貴重な1着を、ただ「希少で貴重で古いもの」という点だけが魅力の1着という事で終わらせるのでは無く、「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた一着です。

 

 

 

 

 

 

サイズ 2(Mから小さめのL相当 )

裄丈 =82cm (ラグランスリーブ)

バスト=55cm(脇下)  

 着丈 =107cm

イギリス/日本製

表地   ハリスツイード                ウール100% 

ライナー ベンタイルコットン          コットン100% 

ボタン  オリジナルのレザー包みボタン&メタルボタン

     アンティークファブリック包みボタン

 

 

 

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1930-1940 Vintage ALTERATION Old British Harris-tweed Herringbone Over Coat

[ALTERATION By Manure of Drawers]  SOLD