End of the19th Century Antique French Indigo Linen Chore Worker Tailor Jacket
19世紀末頃につくられた天然のインド藍による藍染めリネンが作られていた時代の、インディゴリネンのBiaudeを解体した生地で作ったジャケットです。小ロットの枷染めで糸の芯までしっかり染められたインディゴの様々な変化が楽しい一着です。しっかりとした手触りと張りがありながら、柔らかさと軽さを併せ持つ、麻の良い部分だけを集約したかのような昔の生地特有の素朴な趣きを残す風合いを持っています。
Biaudeは19世紀から20世紀中期ぐらいまでに着られていた、中世以降の農夫の作業着だったチュニックやスモックが原型となったもので、馬や牛の放牧などの牧畜者、羊飼いなども着たと言われています。中でもMaquignonという名で呼ばれる馬の仲買人が着ていたことがよく知られています。Maquignonは元々オランダ語のmakelare(仲介や交渉)から派生した名称で、当初は馬のディーラーを指していましたが、やがて馬主や飼育業者までを指す言葉となっていったようです。
1850年あたりの、牛や羊など家畜業者が集まるパリのLa Villetteの家畜・食肉市場の写真には、Biaudeやここでよく着られていたことから、Villetteと呼び名のついたリネンのワークコートを着た人々の姿が映っています。Biaudeを着て、牛や馬を引いて続々とパリの街中の市場へ集まってくるMaquignonや家畜業者の姿は、きっと普通の市民にとっては印象深い光景だったのだろうと思われます。
Biaudeと同様のリネン生地を使ったVilletteは、やがてその生地自体を指す呼び名にも、ごま塩の生地のものまでを含むワークコート(後のアトリエコート)全体を指す呼称にまでなっていきました。
フランスはリネンの原料のフラックスの一大生産地で、自身の上質なフレンチリネンのブランドを誇るとともに、今なお世界のリネン原料のフラックス(亜麻)生産の70%以上を生み出し続ける昔からのリネン大国です。しかしそのフランスも今では、原料栽培以外の工程(特に潤紡よる紡糸はほとんど中国)は国外で行われる事が殆どで、この生地が作られた頃のように、純粋なフレンチリネン生地が手に入る事は少なくなってしまいました。
日本のタデ藍やインドのインド藍といったインディゴ色素を持った植物で世界各地で自然発生的に行われた藍染は、ヨーロッパではウォードという植物による藍染が6世紀頃から盛んに行われ、フランス南部、地中海沿岸のランドック地方やドイツのチューリンゲンはウォード栽培による藍玉の生産地の中心として交易で栄えました。
Isatis tinctoriのインディゴ含有量はIndigofera suffruticoに比べると低いうえに成分抽出にも手間がかかり、15世紀以降のインド航路の発見と発達により流入したインド藍に18世紀までには置き換えられ、絶えてしまいました。その後藍染めの技術の革新である合成インディゴが1897年発明され急速に普及、1910年代にはほぼすべての藍染は合成インディゴで行われるようになりました。
細番手のリネン糸で、高密度に織り上げた目の詰まった生地は、フランスならではの仕事着に使うのがもったいないほどの贅沢なリネン生地です。
全体に散らばる経てきた時間を映す細かなダメージを、丹念に埋めて飾った小さくて粋なデザインを、モダンな感性で楽しんで頂きたいと私達は考えます。
麻は使えば使い込むほど柔かさ、光沢感が増すと言われます。オールドリネンがもてはやされる事が示すように、リネンは着込まれた後が最も美しいのです。
機械技術がまだまだ未発達でほとんど職人の手仕事で麻を処理し、糸を紡ぎ、織り上げた時代のものとは思えないほど細くしなやかな糸で稠密に織り上げられていて、動物の毛がつきにくく払いやすいように考え出されたということです。
ダメージを補修して飾るきりはぎ、パッチ、ダーニング、刺子のステッチを、一針ずつ丹念に、様々な方法で彩りました。色むら、擦り切れ、破れ、陽灼け、退色の痕。偶然と時間と人の手が紡ぎ出すアートです。
高めのゴージ、丸みを加えたヘムのクラシックなライン。暖かで爽やかな風の季節に似合う1着です。
ランダムにチョイスした、バッファローホーンボタンとフランスの納屋から出てきた古布で包んだ包みボタンのちからボタン。
手仕事だからこその変則仕様のベントや切羽は、手縫い皺も美しい柔らかな仕様です。
綿素材を輸入に頼るのに比して自国での栽培が盛んで入手が容易で身近なフランスのリネンですが、しっかり着込まれた年月の経過を映す様々な質感と色合いが入り混じる深い趣を持つ生地は、枯れた風合いがさらに味わいを高めています。
裏地をつけて手ですくって中縫いをした緩やかな顔つきのポケット。
ハンドステッチでのラスティックコットンのライニング。手の温もりではなくストイックさを伝える不揃いなステッチ、縫い皺の表情や生地のコントラストが乾いた奥行きを作り出します。
着込まれ、働くことを経た事で得た生地の彩りは、決して加工では再現することのできない、創造性を持つ時間の痕跡です。
背中心と袖、肩の袖つけは手縫い仕上げです。手縫いならではの不揃いな縫いジワがさらに趣を加えてくれます。
衣服は骨董的な価値を求めるものではありません。その時、その時代を積み重ねて今に繋がる輝きに、現代性を融合させた「古くて新しく、新しいけど古い」もの。1点だけの存在を楽しんでいただきたいと思います。
サイズ 1(S相当)
肩幅 =42cm
バスト=47cm(脇下)
袖丈 =56 cm
着丈 =67cm
フランス/日本製
フロントファブリック ナチュラルインディゴフレンチリネン リネン100%
バックファブリック ラスティックコットンブロード コットン100%
ボタン バッファローホーンボタン(ランダムチョイス)
&古布くるみボタン
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End of the19th Century Antique French Indigo Linen Chore Worker Tailor Jacket
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD