1940-1950 Vintage French Wool Bouclette Coat Made of “Galaries Lafayette”
ホワイトとブラック、毛足の長い糸と普通糸を組み合わされて織られた生地の、80年の時間を感じさせないコート。第二次世界大戦から解放されて間もない頃のフランスで作られた、モード発祥の地フランスのエスプリとファッションの底力がつぎ込まれた1着です。
ギャラリーラファイエットは、ボンマルシェ、サマテリーヌ(建て替えの為、2005年から休業中)、プランタンなどと並んでフランスを代表する百貨店ですが、創設が1893年でこの中では一番新しい百貨店です。エッフェル塔に次いでパリで2番目に訪問客が多いと言われるこの百貨店は、創立当時からファッションと流行品を扱うことを使命とし、ファッションを誰もが手に入れられるようにすることに尽くしてきた百貨店です。
ギャラリー・ラファイエットは競合する百貨店に差をつけるために、人気の衣類を誰でも買えるように提供できるよう、設立当初から独占して販売するプライベートブランドの服を製造するアトリエの設立や買収を行い、顧客の開拓と業容の拡大による成長を遂げました。
このコートは、第二次世界大戦時のドイツによる1941年の占領から1944年のパリ解放までのヴィシー政権管理下のギャラリー・ラファイエットの暗黒時期から解放され、新たな復興を遂げ始めた頃に作られたものです。
1960年代の初めにピエール・カルダンなどの若手デザイナーがようやくプレタポルテの発売を開始しました。このコートが作られた10年以上後のことです。この頃はまだ、高価なオートクチュールや伝統に縛られた既製服しかなかった時代で、そんな時代の中で、ギャラリー・ラファイエットは普通の人々にも手に入れ易い最新のファッションを提供する先駆的な存在でした。
ナチュラルな肩のフォルムを作り出す計算された変形のセットインスリーブ。広い身幅と小さな肩幅をバランスよく繋ぐ、実験的で先進的なパターンはフランスならではのものだと思います。
モダンな表情を持つ生地と、たっぷりしたフォルムの魅力溢れるコートです。フランスならではの味のある生地と立体的な仕立ては、かっちりとしたテーラーワークとはまた違った良さに溢れています。
たっぷりとした身幅から裾に向かって緩やかに広がるシルエットは、コンパクトな肩とのバランスの対比がユニークな味わいを深めてくれます。
フラットながらもボリュームのある衿は、立体的なパターンが作り出したフランスならではのもの。
この頃らしいしっかりとした芯を取り除き、肩のパッドを外し、今着る服になるためのALTERATIONを行っています。
古いキュプラの裏地をイギリスが誇る防水防風素材のVentile clothに付け替えて、全体に張り感やボリューム感を与えるとともに、表地とのコントラストの面白さと、Vintegeにつきまとう不潔感を解消し、さらに風を通さず温かく清潔で明るくモダンな表情を与えています。
ライニングしたのはマッキントッシュクロスと同じく、イギリスが生んだ高機能素材のVentile clothです。
英国空軍のパイロットが撃墜などで冷たい海に投げ出された時などに、水に浸かることによる体温の低下を防止するために開発されました。体を濡らさないための水の浸入を防ぐ機能は、同時に内部の空気を逃さず浮力を確保することにもつながり、救助を待つために水の中で浮かんでいることに費やす体力の消耗を減らすことにも貢献します。
長繊維綿の双糸を経緯ともに超高密度に織り上げることで、綿繊維の毛羽を稠密にすることによって撥水性が発揮される生地です。長時間水に濡れることで水が浸透すると、その水分によって繊維自体が膨張し、より織り組織が緊密となってそれ以上の水の透過を遮断するという特徴を持っています。この自然素材だけで生み出された高機能さは、日本でも防衛庁の海難救助服に採用されるほどの実績を現代でも持っています。
Ventile clothを作るために必要な長繊維のコットンは、全世界の綿の総収穫量のうちわずか2%しか取れません。だからVentile clothは高価で希少で、生産できる工場も非常に限られています。
Ventile clothはラバーコーティングやワックスによる防水加工と違った内部の汗や水蒸気は外に出す防水性、透湿性、通気性の三拍子に加えて、独特のハリ感とフラットな生地の表面感といった、生地自体のテクスチャーの良さという四拍子を備えた独自の位置付けを確立しています。
袖口に折り返しをつけた粋なデザインのカフ。
経てきた年月の証の小さなダメージ。それを隠すのではなく、繕いを魅せる為のダーニングやパッチ。
ヘムを軽くするために表地から浮かせてつけたライニングの裾。適度なボリュームを持たせるために深い見返しをつけ、ハンドステッチでアクセントを添えています。
ライニングを縫い合わせる手仕事によるブラインドステッチ。ミシンで縫えば数分の仕事に、その十数倍の時間をかけることの意味がきっとあるはず。
衿やフロントのヘムのステッチを解いて、緩やかなふくらみのある表情に。
解体した時に顔を出した裾や縫い目の裏側の埃と一緒に、長い年月がこびりついたポケットの埃も全て取り除きます。ポケットの袋布はラスティックコットンで作り替え。
2つの内ポケットはラスティックコットンの裏貼りをつけ、内縫いで縁を浮かせた膨らみのある表情のポケットに。
オリジナルの状態よりも間隔を狭くして数を多くしてボタンを配置。こうしたことで、フォルムの変化などさせなくても、コートにモダンな表情が加わります。もとからあったボタンホールも糸を解いて、新たに作ったボタンホールと揃えて同じリネンコードを使って手でかがりました。
ボタンは英国の1950-1960年代のVintageのデッドストックです。通常に見られる角のボタンのほとんどは水牛の角から作られているもので、主としてアジア圏の水牛の角をアジア圏で加工したものです。このボタンは、英国の有名紳士服ブランドの注文により特別に作られた、英国の牛(ヘレフォードやアバディーンアンガス)の角を使って英国で作られたものです。
4-6mmという厚み、裏側の皮付き仕上げ、ブラウン、ブラック、乳白、透け感のあるベージュと濁ったベージュなどが自然に入り混じった角の色合い、27mmという大きさ、モダンな印象をも感じさせる、間隔が広く大きな穴の4つのボタン穴、丸く切り出した形を粗く削っただけで素のままの表情を活かした風合い、どこを取っても迫力と良さしかない60年以上も前の貴重で珍しい逸品のボタンです。
左ポケットのあたりに手で縫いつけて作ったuselessポケット。この小さなポケットはvintageのフラットな顔立ちに加えるちょっとしたアクセント。
衣服は骨董的な価値を求めるものではありません。
その時、その時代の「最新」を積み重ねて今に繋がる輝きを、現代的な着装や感覚と融合させ「古くて新しく、新しいけど古い」ものとして昇華させた、世界に1点だけの存在を楽しんでいただきたいと思います。
サイズ 2(44-46相当)
肩幅 = 45cm
袖丈 = 60cm
バスト= 60cm(脇下)
着丈 = 104cm
フランス/日本製
表地 = Wool Bouclette Yarn / ウール100%
ライナー = Ventile Cotton Cloth / コットン100%
ボタン = 1950-1960 Vintage British Cow Horn Button
& アンティークファブリック包みボタン
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1940-1950 Vintage French Wool Bouclette Coat Made of “Galaries Lafayette”
[ALTERATION By Manure of Drawers] SOLD