昔のフランスのワークウェアの良さは、
何と言ってもテーラーワークを基本にしたパターンと縫製が作り出す
立体的で曲線的なデザインと、雰囲気溢れる生地の表情。
アメリカやイギリスのように、コントラストをつけた太く頑丈なステッチが
2重3重に入るタフで無骨なワークウェアとは全くの別世界の代物です。
このSALT&PEPPERのカバーオールも本当にカバーオールなのかと思いたくなるような、
「縫製」というよりは「仕立て」と言いたくなる、ビスポークのようなつくり。
肩や袖、脇など、他なら巻き縫いや片倒しに押えのステッチが走るような
部分も、ステッチの無い上品な仕様で、ステッチが表に出る部分も
身生地に色合わせで、ステッチを沈ませたシンプルなルックス。
深みのあるメランジ糸の撚り杢色の生地も、
シックでクラシックな大人っぽさに溢れています。
でも袖の太さ、落ち気味の肩、身幅と丈のバランスやポケットのつくり、
1枚仕立ての軽さとボリューム感不足、ワーク然とした衿は、
よく言えばヴィンテージの趣溢れるカタチだけれど、
今着るためには、ちょっと違うものでした。
服は骨董的な価値だけを求めるものではありません。
ヴィンテージも生まれた時は、その時代の最先端だったはず。
その時、その時代のあたらしい(=普通)を積み重ねた今を、
ヴィンテージに注ぎ込んだ、新しい服には作り出せないスタイルです。
1930-1940 Vintage ALTERATION Salt & Pepper
French Work Duster Jacket
デニムやサージのボトムでワークっぽくストレートに着るのは
王道ですが、バギーなウールフラノのパンツにラウンドカラーのシャツと、
コーデュロイのジレで、田舎の紳士風に気取ったり(ネクタイも良いかも)、
ブラックのニットにチャコールのパンツなんかで
ワントーンっぽく ダークにまとめるのも面白そうです。
1930-1940 Vintage ALTERATION Salt & Pepper
長い時間の作ったヴィンテージを
作り直す(ReMake)のでも、作り変える(ReBuild)のでも無く
「古くて新しく、新しいけど古いモノ」へと
現代的に昇華させた1着だからこそ、
ひねりの効いた秋を楽しんでいただきたい。